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あの日から 4
「洋!」
見間違えるはずないじゃないか。
大学のサークル仲間の飲み会に誘われ仕事帰りに参加してみたが、気乗りせず一番隅の席で適当に飲んでいた。
その時、サークルの同期だった徳田が誰かを連れて少し遅れて到着した。
「きゃー綺麗な子!」
「へぇ男にしとくのもったいないな」
そんな歓声につられて、そちらを見たんだ。
それがまさか…
俺の幼馴染の洋に今日再会出来るなんて!
洋は、高校時代のほっそりとしたシルエットのまま、少しだけ大人びてさらに綺麗になっていた。大人の色香が少し漂いだし、危うい雰囲気に拍車がかかっている。
俺の好きだった儚げな笑顔も、何もかもそのままだ。
俺の洋ではないが、大事な幼馴染の洋だ。
本当に会いたかったよ。
ずっとずっと探していた。
洋を見た途端驚きのあまりグラスを落としてしまい、その音で洋も俺に気が付き動揺しているみたいだ。
もっと近くで…話したい。
お前何していたんだ?
この5年間、一体何処で何を?
早く聞きたいが、洋の席までの距離が異様に遠く感じて動けない。
俺はただ見つめることしかできない。
5年前も今も、何も変わっていないのだ。
洋は案の定…隣の奴らに絡まれて嫌そうな顔をし出した。
気が付いているのに助けに行けない俺は、相変わらず嫌な奴だ。
突然、そんな洋が逃げるように帰ろうとしたので、覚悟を決めて慌てて追いかけた。
ところが、さっきまでいたはずの洋の姿が見えない
「どこに行った?洋?」
辺りを見回すが、姿が見えないことに焦る。
トイレかもと思い、ドアの前に立つと中から音がする。
ガタンッ
「やめろ!何するんだっ!」
洋の嫌がる声が響く。
慌ててドアを開けると酔っぱらったサークル仲間に壁に押し付けられ、抱きしめられている洋がいた。
俺はかっとなり、そいつを思いっきり引きはがした。
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