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つづき
「このオーナー制度はいいな。雑誌に広告だしても確実にフィードバックがあるかどうかわからない。まあ、それが広告の本質だがな。
クーポンも同様だ。でもこの方法なら、確実にレスポンスが計れるし客にもメリットになる。まず安心なのは損がないってことだ」
俺の考えたのはミニオーナー制度的なものだ。会員希望のお客が年会費として12000円を支払う。 店は毎月1回使える1080円のチケットを12枚渡す。消費税分がオマケ。
そうすれば、月に一回SABUROに行く「理由」ができる。
人は理由や動機に動かされるので、チケットを使う目的が生まれるし、 自分が行けなくても誰かに渡せば無駄にならない。
『チケットがあるから一緒に行かない?』と誘いたい相手に提案しやすくなる。
これは相談しなくちゃいけないけれど、月替わりのランチメニューを作りたい。今月のランチと銘打って、それを告知する目的でDMを送れば財布に入っているチケットのことを思い出す助けにもなる。
「チケットの裏書に名前を入れるといいかもな。誰が来て誰がきていないのかが明確になるし、譲渡されたものだとしても確認がとれる。
月替わりのランチはいいな、やたらめったらDMを送るのもなんだけど、この程度の「おしらせDM」ならシツコイとは思わないだろう。
誕生月にはオマケが1マイあるのはどうだ?デザート一皿程度のささやかなもので」
「俺の退社時期、前倒しになりませんかね。こういうのワクワクするし、辞める会社の事で頭を悩ませるのは面倒です」
課長はジトーとした視線を俺に貼りつけた。
「渡辺と石川に言いつけるぞ」
それを言ってくれるな!俺が辞めること、飯塚と新しいジャンルで頑張ることに決めたと伝えた時の二人の顔。土砂降りの雨の中、ダンボールに入れられた捨て仔犬のような情けない姿だった。
俺がいなくなったほうが、お前らの可能性は広がる、絶対だと言い含めたものの一日に何度が恨み節を聞かされる羽目になった。
頑張れ、若者。来期はもっときついぞ!なんせ統合だからな(これは口が裂けても言えない)
「俺なりの仕込みネタもあるが、それは武本が会社から解放されてから着手するつもりだ。今年の年末は忙しいぞ~覚悟しておけ。
あとミツにベタにブログ書かせようかと。そこで告知もできるし、作家希望のあいつにも夢を見させてやりたい」
「トアって何書いてるんですか?」
ポケットからくしゃくしゃになった紙を一切れ。
『ミルちゃんサイコー。片手すっぽりサイズのバストを褒めると「小さいからはずかしい」
どっきゅーーーーん
マジぼれの危険度1000%!
唇かんで俺のシャツの裾を握る姿!
まさか現実に天使をみることになるとは……。ならば共に昇天しないといけないよね!
ミルちゃんが誘う天国の扉の名前は『シークレットガーデン』
お得なクーポン握って門を叩こう!』
あの……これはナンデスカ????
「これミツの今の最善を尽くした文章」
「これがMAX?!」
「題材がこんなだしな。でもやらせてみる価値はあると思う」
課長が言うならそうなんでしょう……黙って従います。物書きって、どのレベルであっても大変なんだな(俺には無理。やる気もないけどね)
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