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september 6.2015 ひょんなことからカミングアウト

 飯塚の顔が金曜からおかしいことになっている。  金曜の朝、出勤してすぐにわかるほどの変化。もれなく土曜日も、おまけに本日日曜日も。いつまでデレデレしてるんだと言いたい。  そうは言っても、毎日顔をみているからわかる変化。たまにしか見ない人間には普通の顔にしかみえないだろう。単純に男前度が上がってピンク色なだけだ。 「飯塚さんってわかりやすいですね。それとアドバイスです。飯塚さんはピンク色の服は似合わないと思います。今は裸の王様がピンクのガウン着せられたみたいなヘンテコリンです」  ハルにそんなことを言われても飯塚は怒るどころか、ピンクは持っていないから大丈夫と、これまたヘンテコリンな返事をした。  それからSABUROの面々は飯塚をスルーして、さっさといつもの鉄仮面に戻りやがれ!な気分で仕事に精をだすはめになったというわけ。  土曜日「おはよう~」とやってきたサトルはまったく普通で、いつものサトル。デレデレもなし、ピンクもなし。  おまけに携えてきたのは「ミニオーナー制」なる企画書だった。スタッフ全員をテーブルに座らせて説明をしてくれた。お~これがプレゼンってやつ?サラリーマンの端っこをちょっとだけカジった気分にさせてくれた。内容もバッチリ。店にとって広告にだすよりずっと安価で運営できる企画だ。チケットや会員カードなど必要なものは見積もりをとっているらしい。  すべてにそつがない。意見を求められたけど、ケチをつけるところなんかないし、どれくらい集まるか考えるとワクワクした。こういう前向きの動きは気持ちがいいので、気持ちの悪いデレデレ飯塚はほっておく。 「サトル。鉄仮面どうしちゃったわけ?」  それぞれが仕事に戻り各自の役割を始めた時、サトルを隅っこに引っ張り聞いてみた。俺の指差す方向にいるのは厨房の飯塚で、これまた嬉しそうに包丁を研いでいる。何故かしらんが、鉄仮面はこの包丁を持つようになってから研ぎに精をだし、ピカピカ状態を保っている。 和食の板前さんもびっくりなお手入れだ。 「あ~あれは出雲の刃物で俺がプレゼントした包丁。出雲は縁結びの神様がいるところだろ?だからお客様との縁が切れませんようにって」  おやおや、そういうことだったのか。敵わないって思うよね、こういう時。そんなプレゼントされたら別にその気がなくたって、その気になっちゃうってもんだ。飯塚なんか、その気マンマンなわけだから、それはもうゾッコンラブ状態だろう。心臓をドキュンと撃ち抜かれたに違いない(言葉が古い?オヤジの知り合いの店を渡り歩いて修行したからね。一世代前に毒されてるの!)  いやいや、違う違う。包丁じゃなくて。 「包丁の謎は解けた。これから悪さしますって妖怪が包丁研ぐみたいに、毎回嬉々として砥石に向かっている意味がわかった。 じゃなくて、飯塚が金曜の朝から気持ちが悪い。鉄仮面がお花の冠のせてピンクのローブ着ているくせに漲っている感満杯なわけ。サトル、飯塚に何か言った?」 「ああ……」  ああ……って、何気にサトルまで照れくさそうってなに!いや、なんか可愛いけど。 「思い切って引っ越ししたんだ。9/3は同居記念日にすることにしたってだけだよ」  同居記念日?そんな記念日をつくちゃったわけ?サトルと飯塚が?そりゃあピンクになっても仕方がない。 「同居って、同棲が正しいんじゃね?」  ボン!  サトルの顔面が盛大に真っ赤になった。うわ~~珍しいもの見ちゃった!

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