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つづき

「ハルさん、僕たちのおしゃべりのネタはダントツ理さんですよね」 「いわれてみればそうですね」 「どれだけ理さん好きなのかと考えてしまいますよ。あのイケメン飯塚さんがメロメロなのは納得です。 10月いっぱいで仕事やめて毎日SABUROに来てくれるのは嬉しいのですが、ハルさんと理さん談義ができなくなるのは残念です」 「そうですね。じゃあ「トアさん談義」に切り替えますか?」 「なんですと!?」 「最初はギョっとしましたが、トアさんのエンタメ話が最近面白い。トアさんのおかげで映画にも結構詳しくなりました。レンタルにいっても監督で借りる作品を選んだりバリエーションも広がったし。監督さんや俳優の名前はまだまだですが、いつかトアさんとバキバキのエンタメ談義をしてみたいです」 「ハルさん!」  いきなり抱きつかれて持ち上げられました。何事ですか!理さんの胸の中は優しさ満載でしたが、トアさんのこれは拘束。しかも高速回転木馬的な抱擁です。  グルグル回られて、B級ドラマのバカップル状態に見えるだろう図を想像してゲンナリです。おまけに完全に足浮き上がってるし!僕は子供ですか! 「僕が話し出すと大抵の人は下をむいちゃうから、あまり話をしないようにしているのです。 それが!それが!僕とバキバキ談義だなんて夢のようじゃないですか!うわ~~ハルさん、弟でも友達でもなんでもいいですから、僕と仲良くしてください!うわ~~」  うわ~~じゃなくて!降ろしてくださいってば! 「おうおう~、また今日もジャレちゃってるね、君たち。何?新しい遊び?」  ミネさんの笑いを含んだ声に、ようやく正気にもどったトアさんが僕を降ろしてくれた。ハアハアしてる……運動神経切れ切れなのは本当ですね、この若さで僕を持ち上げてクルクルで息切れです、救心飲んだほうがいいかもしれませんよ? 「ハルさんが僕の弟になってくれました!」  いつ承諾しました? 「へえ~そうなの。じゃあ、俺も~」  今度はミネさんにギュウギュウされる。やはり理さんのが一番いい! 「ハルは来春から俺の同居人だからね。弟を同居人に上書きだ。うりゃ!」  どうしてここでお姫様ダッコになるのですか!意味不明すぎます。この負けず嫌い! 「なんか似合いますね、ハルさんがお姫様ダッコされている絵。いいです、かわいい」 「まじ?俺も見たい。トア、タッチ交代」  僕は荷物のように受け渡されて今度はトアさんに抱えらえました。背がミネさんより高いから、ちょっと怖くて首にしがみついてしまいました。 「おお~ホントだ、かわいいじゃないの。そのしがみついてる感がいい!」 「ですよね~ハルさん最強ですね」 「鉄仮面の御姫様ダッコされている図なんて怖いだけだよな~」 「お前ら何やってんだ?休みは終わりだ!村崎、トマトの湯剥き終わらせないと仕事にならない」  おっかない!やはり全身タイツだったら悪の軍団の御頭に間違いなし。ふと沸いた疑問。言っちゃおうかな~言っちゃおうかな~言ってしまおう! 「飯塚さん、理さんをお姫様ダッコしたことあります?」 「ああ?」  ボン!っとスイッチを入れたかの如く、飯塚さんの顔が真っ赤に染まりました。 「ぶっ」(堪えられなくて思わず噴いてしまった) 「マジですか!」(トアさん茫然) 「へええ~」(意地悪ガキ大将の企みのような微笑みは、もちろんミネさん) 「いいから仕事しろ!!」  グルンと音が聞こえるぐらいに背をむけてズンズン歩いていく飯塚さんを見送りながら僕たちは納得です。 「さすがサトルだな。すげえな、なぁ?」 「ええ」 「おそるべしです」  僕はニヤニヤしながら思いました。10月末ギリギリまで、僕たちの「理さん談義」はまだしばらく継続しそうです!

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