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つづき

 ワイワイしている皆さんにまかせて厨房にいくと、サトルが腕を組んで立っている。またもや会社を抜け出して立会人に変身。 「あれなら俺でも作れるかもしれない!牛乳なくてもいいとは驚きだ。子供がいる家庭ならともかく、独り暮らしの男は牛乳買わないし。スキムミルクね~へえ~」 「SABUROは牛乳だけどね。カロリーは牛乳より少ないけど糖質はスキムミルクの方が高い。やっぱパスタとか糖質高い料理をだすから、削れるところは削ろうと思ってるのよ。低糖質コースとかいずれやってみたい。あくまでも思いつきレベルなので、変なこと考えるのはナシでお願いしますよ、サトルさん」 「もう頭にメモった。忘れたころに議題として提案しようかな」 「口走ったことを少し後悔してる」  コールドテーブルからシフォンケーキをだしてカットを始める。 「どうするの?それ」 「皆にデザートとして出そうかなと。金時生姜が手にはいったのでジンジャーシフォンにしてみたんだ。なんかあのグラタンで3000円とか、気が引ける。あとサラダも出す。バゲットもつける」  サトルは呆れたようにため息をついて言った。 「まあ、ミネのことだからちゃんと原価計算したうえでのことだろうけど」 「そりゃ、もちろん」 「ちゃんと技術料も計算に入っている?」 「入ってるよ!」  サトルのじとーとした全然信じていませんよな視線を精一杯受け止めました。入ってるよ、そりゃあね。(いちおう)  皆が料理に取り組んでいる姿をぼーと眺めた。オヤジの作った料理が大好きだったし、鍋やまな板の前に立つ姿を格好いいと思った。だから小さい頃からこの道以外考えたこともなかった。  料理の役割は女性のものだと世間一般ではなっている。毎日献立考えたり、買い物いったり大変だろうなって。なんかひとつでも新しいことを覚えて生活に活かしてくれるといいな。 「サトル、グラタン食ってく?」 「やったぁ!」  グラタンをオーブンに突っ込んでサラダとパンとシフォンを皿に並べた。2回目もなんとかなりそうでよかった、よかった。  それに今日はテレビの話題がでなかった。よかったよかった。

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