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【 ♪♪♪-♪♪♪ 】  私にとっては朝のノンビリ時間だけど、世の中はすでにめまぐるしく動いている。スマホのディスプレイには馴染みの名前。さて、どんな用件かしらね。 「おはようございます」 『おはよう、お世話になっています。急で悪いけど今日空いている時間ある?』  開きっぱなしの手帳を確認。スケジュール立てたあとでよかった。空いている時間につっこめばいいだけだ。 「午前中は10時~11時半、午後はちょっと厳しいな。どんな案件かわからないけど、途中で中座はまずいでしょう?打ち合わせがつまっていて」 『じゃあ、その午前中、私が押さえる!いつも申し訳ないけど、ストックから助けを借りたい。監督がオーディションの人選に不満足で、ごねているのよね。芝居できなくていいから、キャラクターの持っている「素」のテイストを持っている人間がいないのか!っておかんむり』 「監督さんは誰?」 『弓矢よ。脚本も書いてるもんだから、思い入れがありまくりで妥協がない』 「なるほどね、でもホン読まなくちゃキャラのイメージわかない」 『10:00に来たときに読んでくれる?打ち合わせといってもいつもの流れだから』 「そうね。もしかして早めにいけるかもしれない、その時は連絡します。時たま思うけど、昔の女衒とかこういう感じだったのかしらね?」 『何言ってるのよ。吉原に斡旋するのとプロダクションじゃ大きな違いよ。それに貴方は男専門なんだし。じゃあ、とりあえず、何かあったらメールか電話します』 「それでは、後程」  切れた電話をテーブルに置き、手帳に予定を加える。「男専門」まあ、確かに。それに陰で「イケメンブローカー」なんて言われてることだって知っている。  でもこれは自分が始めたことが広がっていった現象でしかなく、これを目指していたわけではない。副産物的な仕事だから、何を言われても平気だ。  弓矢監督ね。私としては芝居のできない人間がスクリーンの中にいることに違和感がある。この監督の映画はだいたいそうで、始まったあたりは「あららら」なんて思いながら見始めるのに、ラストになると、この人選でよかったわけか~へえ~となる。  今回オリジナルのホンだとなれば同じパターンだろう。何人かを思い浮かべながらクローゼットをひっかきまわす。さて、今日は何を着ましょうか。 【 ♪♪~♪ 】  クローゼットを物色しているとメール着信の音。石山さんはせっかちだから、さっき言い忘れたことがあったのだろう。受信ボックスにあった名前は「北川」で石山さんではなかった。  札幌の広告代理店にいるこのオッサンは、とても面白くて興味深い。そして発想が素晴らしい。「ブッコミの北川」という通り名は伊達じゃない。  磯川さんの件は滞りなく済んだし対談も好評だった。今度はなんでしょうか?メールの件名は『好物だろ?』これってってスポーツ新聞のエロページのダサイ小説にでてきそうなチープさ。まったく何をしたいのか。本文なしの添付画像だけ。画像をひらいて驚いた。 「正明くん?うわ~予想以上に育っている!」  おもわず大きい独り言を言ってしまった。北川さんに全然似ていない可愛いい顔は、生き生きと輝いている。  キラキラ輝いている……そしてもっとすごいものが揃っている。正明君と一緒に写っている男子4人。  即パソコンに転送して大きな画面で確認。これは、これは!宝の山じゃないの!ここどこ! ええ、ええ、大好物ですよ!北川さん! 【 ♪♪~♪ 】 パソコン画面にかじりついていたら、スマホが再びなった。 ≪北川≫ ひったくるようにして手をのばし、ダッシュでタップ。 『久しぶり、どうだ?最近は』 「北川さん!こんな隠し玉持っていたのですか!」 『お気に召したか?』 「召しまくりです!」 『スケジュールあけて1泊2日で札幌こないか?LCCなら足と枕を手配する。顎はもちろんここでおごってやる』 「ここ?」 『息子の就職先だぞ。このスタッフが切り盛りする「SABURO」だ』 「スケジュールにねじ込みます!日程決まったら連絡しますから!なんとしてもぶち込みます!」 『ブッコミは俺の専売特許だろうが。あと高村さんも噛んでる。どうだ、ワクワクするだろ?』  ワクワクどころの話しじゃない。ワナワナ震える武者震いとはこのことだ。 暇の挨拶も適当に電話を切ったあと、手帳のスケジュールの再構築にとりかかった。 あまり夢中になりすぎて、今日のアポに遅れそうになったほど。 さぶろ?って三郎?店の名前はかなりダサイ。でも久々の大物だわ!

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