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つづき

 先を急ごう、早く帰らないと明日も仕事だしね。 「んで、これはハルの」  ケーキ仕様の紙箱を渡す。ちょうどショートケーキが4つ入るぐらいのお手頃サイズ。ハルはそろそろと受け取って俺の顔をじっとみた。許可とらなくても開けていいのに。 「開けてみな?」  大事そうにテーブルの上に箱を置いて、そっと開ける。 ハルに作ったのはかぼちゃのパンナコッタ。自分でかぼちゃを買わないなんていうから、栄養満点のおやつにしてやった。 「俺の個人的な好みなんだけど、プリンよりパンナコッタのほうが口当たりがよくて好きなんだよね。もちろんかぼちゃタップリだし、生クリームと牛乳で美味しく食べられる。 ハルは甘いもの好きだから、小腹減った時に食べられるものがいいかなって」  ハルは好きな男にはそんな顔しちゃったりすんの?てなぐらいのかわいい顔だ。嬉しそうで恥ずかしそうで、でも嬉しい!なね。やっぱりハルはかわいいじゃないの。これがキモかったら、マジで世界の大部分がキモイ族だわ。  さて、最後はバカップルだ。 「晴れて退職おめでとう、これからもよろしくってことで二人にはコレ」  ワンホールケーキが入るくらいの紙箱。なんせ二人分だし。  腕組みして片方の眉だけあげて俺をみているのは鉄仮面。『いつの間にこんなこと仕込みやがった?』と言っている声が聞こえるよ、いつってね、いつの間にかだよ~~  サトルはびっくりと、幸せそうに表情を緩めた後、キリっとひきしめて箱を受け取った。やっぱりキリっとなるわけね、さっすがです。 「かぼちゃとベーコンがはいったケーキなんだけど、ケークサレ的な甘くないのにした。 ワインのつまみになるから、それ食べながら二人で乾杯するといい」 「ミネ、なんで?今日なにかあった?」 「何かって何もないけどさ、サトルは明日から正式にSABUROのスタッフだろ?ハルはかぼちゃを自分で買ったことがないっていうし、トアはかぼちゃのグラタン=脳みそっていうヒドイ状態なわけ。 俺は日本人だからかぼちゃったら冬至だけど、冬至の日にかぼちゃに向かい合える自信がないのよ、残念ながら。 でもあと2ケ月は死んだ気になって頑張ってもらわなくちゃいけない。冬至は風邪ひかないようにってかぼちゃを食べるだろ?だからハロウィーンに便乗して、かぼちゃを提供して、皆元気に乗り切りましょう!っていう俺なりのみんなへの配慮?みたいなもんだよ。 たいしたもんじゃないから、それ食べて頑張ってくれればいいかなって」  最後には皆が笑顔で再度お礼を言ってくれた。 トア→もう大丈夫です!かぼちゃグラタンがメニューになってもガッツリおすすめできます! ハル→僕は同年輩の人間といるのがつまらなくなって困っています。またハードルが上がってしまいました。僕の恋愛と友人関係が暗黒になりそうです。  サトル→やっぱミネは格好いいよね!衛はこういうスマートさがないからさあ。ありがたくいただくね! 飯塚→いつか仕返ししてやる。さらっとこういうことやりやがって。でもありがとう。  別に高いものじゃないし、手間だってさほどかかったわけじゃない。でもなんかこっちが嬉しくなる、そんな夜だった。ハロウィーンも悪くないかもね!(コスプレは絶対しないよ~)

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