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つづき
<<そして10月30日>>
「お疲れさま~」
サトルがラストオーダー間近に店にやってきた。今日は10月最後の平日、サトルが会社と切れる日でもある。有給消化でとっくに送別会も終わっているというのに、若手二人のたっての希望で軽く飲むというのは聞いていた。
帰りに寄って衛を拾って帰ることにするさ、そう言っていたから、飲み会も終わってここに来たってわけだ。
一組、また一組。ポツポツと客も帰りはじめ、後片づけをしながらボンヤリ考える。1年前は飯塚が休みの日だけ来て手伝いをしていた。サトルにはまだ逢っていなかったし、もちろんハルのことも全然しらなかった。
オードブルをやる気はなかったし、トアみたいな歳上さんがスタッフになるなんて考えもしなかった。そういえば太郎がまだ働いていたな。そう考えるとすごく不思議な気持ちになる。
飯塚が来るようになって俺の生活が少しずつ変わって、たくさんの出会いを得て今がある。
今年は暗黒だろうが、なんだろうがいつもよりも前向きに12月を迎えられそうだし、楽しい時間が増える予感もある。
昔から仲間意識が薄いことは自覚していた。別に群れなくたって自分の面倒は自分でみるさ、そう考えていた。でも最近は少しだけ変わったと思う。
助けを借りて、意見を聞いて、自分で考えて提案する。そうして精査している一つ一つの事柄がとても大事に思えるようになった。
可笑しいや。少し大人ってやつになったのかな。
22:00を回って店はクローズになった。後片付けを終えて最終チェックをしたあと、帰ろうとする皆を呼びとめる。
「ちょっと渡したいもんがあるんだ」
なんだろ?な顔がこっちを見ている。用意していた物をコールドテーブルの奥からひっぱりだし、ホールに運んでテーブルに置いた。
「えええと、このあいだハルとトアでハロウィーンの話しになっただろ?覚えてる?」
とたんに顔をしかめる二人。たぶん頭の中ではサルの脳みそが浮かんでいるはずだ。結局ハルはトアにDVDを借り、サルの晩餐シーンを目に焼き付けたらしい。
「それで、トアがカボチャのグラタンを一生食べられないってのはマズイだろ?うちでメニューにしたら売上増どころかトアにサル話でもされて客のオーダーが激減しそうだしね。で、はいこれ」
袋の中身はキャセロールにはいったかぼちゃのグラタンだ。
「一気食いもいいけど、冷凍できっから。好きなチーズ乗っけて焼いて食べて。俺のグラタンは旨いからもう二度とサルはでてこなくなるはず」
あまりに予想外だったのかトアが袋を受け取ったまま固まっている。うわ~とか、あざ~す、とか言ってくれな気分。無言ってなんだか恥ずかしいって。
「まさか僕のために作ってくれた……ですか?」
日本語変だよ、外国人ですか?
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