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つづき

 俺は何も言わずに理がパソコンを操作する姿を見ていた。俺個人の意見としてはゲイでもバイでもストレートで何でもいい、人がどこかにジャンル分けしたいというなら好きにしてくれて構わないから。  AVもゲイビも俺には効果がない。目の前につねに理がいるのだから、こんなもの必要がないしゲイならゲイでいい。他の男とも、勿論女とも、理に感じているような気持ちや絆を築くつもりがない。とても単純なことだが、理はどこかに自分の正体を見つけたいのだろう。その気持ちはわからなくもないから、納得するまで試せばいい。 「これは二人ともイケメンだし、「cute」ってぐらいだからよさそうだ」  始まった動画はベッドの上でしっかり抱き合うカップルだった。ガツガツ打ち付ける腰使いもない。おだやかに相手の中に沈んでいる。腰にまきついた足の様子から深く繋がっているようだ。キスをし、髪をなぜ、腕をまわし固く抱き合う。言葉もなく二人は互いの視線しか追っていない。ゆったりとした動きとときどき漏れるか細い喘ぎ声。  まずい……これは……まずい。  ベッドの上の理が鮮明に脳裏に浮かんだ。パソコンから聞こえてくる音が慣れ親しんだ声に重なる。理は途中で再生を止め。ゆっくり立ち上がると俺の前に立った。 「わかったよ。これ見てわかった」 「な……にが?」  かすれて出てしまった声が、そのまま自分の状態を理に見せてしまっているようでバツが悪い。あの二人の姿は「見せる」ためのSEXじゃなかった。深く相手を欲しいと願う心が透けていた。それは俺が理に対していつも思う事で、自分を沈めれば沈めるほど理の何かに近づけるのではないか。俺達二人だけが知っている何かが身体に埋まっているのではないか。  繋がる事で、見つけられる。漠然としたものだが肉欲とは別の所に理は存在している。その域に俺は行きたいと常に願うから手を伸ばす。腕の中に囲い込む。  これ以上どこかにいかないように。俺も一緒に連れて行ってくれると信じて。  ゆっくり頬が両手で包まれた。おでこにそっとキスが落される。 「わかったよ。ゲイでもノーマルでもなんでもいい。他の男も女も駄目なんだってことだ。衛がいればそれでいいってことで、他人が何を言ったって全部ハズレなんだ。 衛がいるから俺がいて、俺がいるから衛がいる。 それだけのことだった、単純なことだった」  理はふわりと微笑んで膝の上に跨る様にして俺を抱き締めてくれた。迷わず背中に腕を回す。 「さっきの動画に反応しちゃったのはあの二人にじゃなくて、衛を思い出しちゃったからだ。あの時の……衛を」 「俺も」 「俺をこんな風にできるのは衛だけ」 「俺をこんな風にできるのは理だけだ」 「気が合うな」 「明日は休みだ」 「うん……気が合うね、俺達」  誰でもない、理という存在があるからこそ自分が生かされる。それは揺るぎのないもので、誰も壊すことのできない物だ。互いを想いあう心は二人のもの。 『衛がいるから俺がいて、俺がいるから衛がいる』  それが真理で未来に繋がる二人の心。理の中に沈んでしまおう、そこにある何かに触れようと今日も足掻いてみよう。ゆらゆら揺れて漂って包まれよう。  愛しい存在の中で眠りにつこう……。

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