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後書き+α

 ここまでの閲覧ありがとうございます。 今回はジャンルとしては「親子丼」に挑戦してみました。そして俗にいう「オナホ」をやたらと調べました。SNSだとかでやたらと目にする物もあれば意外にも様々な種類や形状があって驚きです。シリコンだけでなく、シート状やカップ状の物もあった驚きも少し落とし込んでみました。そして女性用のそういったグッズも受になら使えるのでは?とは思ったのですが、あまりそちらの方面に詳しくなく、結局はバイブとローターというBLでもよく目にする案しか浮かびませんでした。  そしてタイトルなのですが、元々の設定メモの段階では「XOX」と書いて「キスハグキス」と読むオシャレめなスラングでした。ですがタイトルがあまり内容にそぐわなかったので、急遽変更したのが「Entrusted」でした。原形のEntrustで、「~委託する」等の意味でした。ですがそれもやめました。英単語にあまり自信がなかったからです。さらにその次は、「犬と蜘蛛」でした。蜘蛛の生態と作風が似ていたと思ったからです。けれども、蜘蛛というと生々しくおぞましい印象がありこれも没になりました。そしてこのタイトルになりました。その前に、「悲しみよこんにちは」という名作の邦題が強く頭の中から湧いて出てきて、直前のタイトルは「エディプスよ、こんにちは」でした。そこから駄洒落にして「おいでオイディプス」になり、もう少し短く固くして「エディプよ」に決定しました。ちなみにエディプスとは、「オイディプス」という王の話から派生したコンプレックスの中のひとつを冠しています。  それから長編と違いあまり設定を練り込まずプロットも組まなかったため、ストーリー展開はその時の気分次第でした。松太が狭山に告白しに来た時点が分岐点でした。他の展開の可能性としては、松太との駆け落ちでした。秀政と結ばれる展開は視野に入っていませんでした。ですが、秀政がメインの話にしたかったもののいつの間にか松太がメインになってしまったところは反省点です。  書き始めた頃の構想では誰と結ばれなくてもハッピーエンドにはなるんだぞ!という考え方でした。ですが段々狭山のやり口が横道に逸れ、途中で狭山が松太に絆(ほだ)されてしまうのではないかと思いながら軌道修正した結果、ヤンデレの傾向が出てしまったので、次作は本当にハッピーエンドを目指したいものです。それから1行2行で終わらせないおっさん受。おっさん受といっておきながら秀政を抱いたシーンが数行しかないのだが…?おっさん受を謳うな!タグ消せ!という感じがわたくしの中にもしますので、後書きを締めた後にお付き合いくださいませ…というわけで後書を終わりにします。ありがとうございました! IF展開。 ・秀政が再婚しないし嫁生きてる ・狭山と秀政の嫁に関係がない ・狭山が秀政にコクる 「坊っちゃん俺のこと…好きだったのか…」  もうどうにでもなれ、と狭山は真っ白くなってしまった顔と、頭の中でつい、言ってしまった。好きという気持ちに耐えられなくなってしまった。どれだけ酒に酔っても嘔吐はしないくせ、恋慕に酔って気持ちは嘔吐してしまう。オート化した思考と口が、秀政の酔いを覚ましてしまったらしかった。  俺も坊っちゃんのこと好きだぜ!などと気の利いた返しをされず、狭山は安堵した。 「驚いたなぁ~、どうりでイケメンのくせに女っ気がないわけだ。とんでもないせーへき持ってんのかと思ってたけど。まさかホモだったとはな~」  すももに染まった肌を舐めたくなる衝動を抑え、狭山は静かに日本酒を口にする。狭山は酒を入れると顔が真っ白くなってしまう体質だった。おそらく酒には強かったが、その許容量を越えたらしい。成人を迎えた時、初めて酒を飲んだ。秀政と。それから松太が成人するまで、時折2人で飲んだ。権や松太がソフトドリンクで付き合うこともあった。 「ホモは、男性が好きな男性でしょう。おれは安永さんが好きなんです」  お前…と秀政が言いかけて言葉を止めた。 「酔ってんのか?」 「まぁ、ちょっと…」 「それ、素面で言ってみ?そうしたら、考えてやる。なんならソープ行くか?」 「酷なこと言いますね…」  狭山はテーブルに両腕をついて顎を乗せる。素面ではやらない仕草だった。 「素面で言えねぇなら、聞けねぇよ」 「そっちではなくて、ソープランドのほうですよ…秀政さんじゃないから勃たなくて、笑い者にされたらおれ…まぁ、ソープ嬢の人たちは関係ないか」  狭山はぼそぼそと喋る。秀政は、がははと笑う。 「酒飲まんやつは腹割って喋らないから信用ならん、って言われたことあるんです」  今のアルバイトの前の店長だ。狭山は安永家の者の前以外ではアルコールを口にしない。飲みの誘いを断り続けていた時、そう言われた。 「酔っ払うほど飲むやつのが信用ならないわな!」  がはがは笑う。秀政は酔っ払っているが、狭山は秀政ならばうっかり信用してしまうかも知れない。その皺寄せも喜んで受けるだろう。もしかしたらその"皺寄せ"すら"使って"しまうかも知れない。 「素面になったらまた言いますね」 「まぁ、悪い気はしねぇよ、どういう意味でも」 「そんなことを言って…意味分かってないですよね」  狭山はテーブルを隔てたところに座る秀政を見つめる。顔が真っ白くなるまで飲むと目が据わってしまうことを知っていた。秀政には睨んで見えるかも知れない。狭山にそのようなつもりは微塵もないけれど。 「分(わ)ぁってるよ。ケツだろ。いいぜ、掘ってやる」 「秀政さん…」  内容はとにかく、その潔さに胸がきゅんとした気がした。甘やかな声で名を呼ばずにいられない。 「違うんです、おれはあなたを抱きたいんです」  譲れない。だが秀政と肌を合わせられるのなら抱かれるのも視野に入れておこう。 「…まぁ、それが素面で言えたらな?」  秀政は、にかっと笑う。狭山は蕩けた目で秀政の姿を眺める。テーブルに秀政の手が乗せられた。指毛を1本1本噛んで引っ張ってみたい。少し伸びた爪を噛み切ってみたい半分、爪切りで綺麗に切り揃えてみたい。梅の種を思わせる指の関節を舌で弄んでみたい。荒れた指先、ささくれた指の背に毎日クリームを塗り込みたい。肉厚の体温が高い掌を合わせて身体を重ねたい。 「恥ずかしい、やつだな…」  妄想と願望に思考を支配され、隙だらけになった脳の勝手な命令が手に伝わってしまったらしい。気付けば秀政の手の甲に手を乗せ、親指で撫でていた。すりすり、すりすり、媚びるように。 「そろそろ帰るわ。なんつーか、まぁ、場合によっちゃ俺、忘れっから。でも、マジなら後悔…すんなよ…マジの告白なら…」  少しずつ秀政の語気は弱まっていく。酔いとは違う赤みが差している。ビデオの一時停止でもしたのか狭山は瞬きも忘れて固まった。可愛すぎてかっこよすぎて受信した情報が詰まってしまう。お前にドン引いたから帰るわ、という意味でなくて良かったと、まずは溜息を吐くことが優先された。  秀政の休みの日を狙って、安永家に向かう。薔薇の花束100本の香りが商店街を駆け抜けていく。周りのぎょっとした目や好奇の目も気にならない。 「お前…アポなしか…」  玄関の引き戸がガラガラ大きな音を立てる。腹を掻きながらジャージ姿の秀政が姿を現した。 「秀政さん、好きです」 「…ッ」  背に隠した花束を差し出し、跪く。花びらが舞う。秀政が口を開けて花束を見つめる。 「これ、暗にケツ穴を表現してみました、とか言わねぇよな?」  花束に顔を近付け、薔薇を見ている。呆れた様子で秀政は訊ねる。 「100回抱かせていただけるんですか?」 「俺の歳を考えてくれ…ってか100本もあんのか…初めて見たわ…」  秀政が青褪めていることにも気付かない。その美獣は薔薇色を反射させている。 「…?ちょっと待て、俺が抱かれんのか…?」 「そうですよ…?」 「いや、どう考えてどう見ても、若くて綺麗でイケメンなお前が抱かれるべきだろ」  薔薇の中から何か発見したらしく秀政は花束の中に無骨な指を入れた。 「そんな褒めないでください。我慢出来なくなります!それに秀政さんだって愛嬌があって明るくて、すごく可愛い素敵な人だと思っていたら男気もあって潔くてかっこよくて可愛いくて…」  秀政は大量の薔薇の間から薄い正方形を取り出す。1辺が秀政の小指くらいの長さの薄い蛍光ピンクの袋。 「これ何」 「コンドームです。マナーはしっかり守ります。後悔はさせません」 「お前、嫁と息子たちが旅行行くって知ってたのか?」  秀政は苦々しく訊いた。狭山はじわりじわり胸に広がる高揚感にぞわぞわする。 「そう、だったんですね…!あ、そういえば松太くんがお、土産の話、していたかも、知れません…!」  興奮と期待に声が上擦る。調子が保てず妙な調子がついてしまう。墓穴を掘ったと秀政は後退(あとずさ)る。 「無理強いは、しません。恐れないでください、おれのこと。身体は二の次ですから」  狭山は微笑んだ。 「いつから、俺のこと…」 「10年以上は経ってます。詳しいことは覚えていません」  あ~あ。秀政は頭を掻く。 「えっと、なんだ。痛く、すんなよな…」 「…秀政さ、ん…?」 「こんな熊みたいな既婚者子持ちのジジイにコクってきてんだ、お前は。それなりの覚悟はあんだろ?」 「は、い…」  秀政は背を向ける。薔薇の反射か、耳が赤い。薔薇の反射を受けるには距離があるけれど。 「俺には嫁がいんだ。かわいい息子たちもいる。あいつらに1番2番3番はねぇ。でもお前は俺の1番にはなれない。だからお前を最優先には出来ない。そこも、理解出来てるのか?途中で気が変わったとか、無しだぞ」 「おれは家族想いのあなたに惹かれたのですから、当然です」  狭山は唇を噛んだ。 「なら俺はお前に応えてぇんだよ。お前を家族だと軽々しくは言えねぇけど。でも小さな頃から見てきた。お前の優しいとこ、頼もしいとこ、頭良いとこ、真面目なとこ」  秀政はゆっくりと振り向く。 「チンコは嫁のだから、ケツ穴はお前にやる」  照れ隠しなのか。秀政の揺れた目は狭山を見ない。狭山はほろりと涙を零すのを誤魔化した。ありがとうございます、でさえ口にしたらダムは決壊してしまう。  唇もおそらく妻への操だろう。口吻けはやめ、頬と額に口を落とす。身体中に唇を落とす。「チンコは妻の」と言っていたが触ってもいいのだろうか。訊ねると、訊くなと返ってきてしまう。絶頂の少し手前で留めておく。両脚を開かせて、秀政の薔薇を舐めた。執拗に舐める。窄まった皺を丹念に舌でつつく。ふわりとした尻にキスした。薔薇の花束に入れた小袋タイプのローションを垂らす。中指を時間を掛けて入れていく。拡げるように少し揺らす。しばらくそのままで胸や腹に唇を落とす。冬を越え春を迎えた大地の芽吹きに似た毛に頬を寄せ、撫でられにいく。静寂の中で昼を告げるヘリコプターの女声アナウンスが空の遠くに聞こえる。陥没しているが男にしては膨らみのある胸の(いただき)を嬲る。秀政の背筋が小刻みに震える。その瞬間に一度中指を爪が見えるところまで引き抜き、また突き入れる。衣類の摩擦による色素沈着したブラウンがかったローズピンクの乳輪を吸いながらゆっくり同じ動作を繰り返す。姿を現したシャイな先端を緩く歯で噛む。 「痛ぇっ、て…」  秀政が後ろへ逃げる。中指が腸内を探る。くるくる回す。秀政は熱い息を吐きながら悪態を吐く。狭山は内心焦った。 「ぁっ…く、痛ぇよ、ンっく…」  ひくひく狭山の中指を食い締めて秀政は天井を仰ぐ。腰が少し浮いた。 「痛ぇ、から…も、抜けっぇ…ッ」  指に当たったこりこりした感触が面白くなって何度か捏ね繰り回す。 「ッあ、ァ!っく、痛ェからぁっ!」  秀政の腰が前後に微かに震えシーツに皺が寄る。 「すみ、ません…」  動きを止めると、秀政は「あぁ、」と惜しむような高い声を上げる。狭山は異質な感触のした箇所から指を放す。後で調べようと思った。癌かも知れない。しかし下調べした前立腺が見当たらない。 「ここ、痛いですか?」  もう一度、こりこりとした感触に指の腹が触れる。薬指も添えた。ここ以外に前立腺と思しきものがない。 「ンッァ、痛ぇから…やめぇ、」  2本の指が交互に(しこ)りを撫でる。 「っあああっ、」  雄々しい声がひっきりなしに漏れている。狭山は手を動かしながら秀政の紅潮し、眉を寄せる秀政の顔に見惚れていた。ひくんひくん、生々しい灰色を帯びた笠が頷いている。光って狭山を挑発していた。 「泣かないでください」  秀政を長年陰から見守っていた笠と見つめあって、指で一孔から溢れる涙を拭う。利き手ではなかったため爪でも当たったのかも知れない。 「っあンっ」  高い声を出して初々しいベビーピンクがくぱくぱ狭山の指を柔らかく咀嚼する。 「っは、んぁ、っは、…」  秀政の茎を扱きながら蠢く蕾に咥え込まれた指をまた動かす。 「ぅんっ、あ、ぅ、抜け…ッ」 「秀政さん…」  痛かったのか。秀政の乳首を吸ってから指を抜く。秀政は秀政自身の掌をべろりと舐めてから狭山の脚の間のものに手を伸ばした。 「な、にして…」 「俺はなぁ、ソープに来たんじゃねぇんだよ」  こしこしと秀政の手が狭山のそれを握ってから動きはじめる。すでに芯を持っていた。 「挿れれば、いい、んだよな…?」  ある程度狭山のものが大きく膨らむと秀政の顔は引き攣っていった。返事を忘れていた。呼吸で精一杯だ。 「こんなん…入らねぇ…だろ、さすがに…」  苦笑いしながら手癖なのか狭山の屹立を擦っている。 「出、ちゃいます、から…!」  秀政の手首を掴む。 「ゴム着けてやるから待ってろ」  掴んだ手首を引かれ、素直に放す。秀政は薔薇の花束に入っていたコンドームを狭山に被せる。封を切る音がどこか夢のようだった。コンドームに包まれた狭山の雄蕊を秀政は跨ぐ。狭山の肩に手をついてゆっくり腰を落としていく。 「ぁ、はぁ…っ、んぐ…、くぅっ」  虚ろな双眸が細められ、歯軋りの音が微かに聞こえた。息が深く吐かれ狭山の首筋や鎖骨、胸にかかる。きつく温かい感触が先端を呑み込む。脳味噌を掻き回される。ぼんやりとした頭。腰骨に響く(あで)やかな痺れ。 「秀、政さ、ぁッ…!」 「ぁぐっ、ふぅ、はぁ…ぁあ、」  最も苦しい場所を拡がった花弁がぱくりと呑む。妖しい坩堝に引き絞られる。蕩けてしまう。 「祈っ…」 「秀政さん…」  秀政の双玉を包んだ肌が狭山の腹に当たる。 「ははは…奥に、当たってらっ…ぁあっんっ」  脂汗を浮かべ、秀政は青褪めている。だが笑みを無理矢理浮かべてみせた。狭山の胸がまた、きゅんとした。鋭い痛みと切ない甘さ。ずくり。鼓動とともに秀政の花を支える茎が脈を打つ。秀政は天井を仰ぐ。晒された喉笛に食らいつきたくなってしまう。 「大きく、すんなぁっ…、腰、っ壊ッ、」  息を整える秀政を突き上げる。 「っあ、だめンっ、やめンあっ、あ、あ、あ…」  嬌声が耳を犯し、腰を速めさせる。秀政の勃ちっぱなしの花芯が大きく揺れる。小さな深淵が涙を流して狭山を大きく上下する中で凝視していた。 「いのっり、だめンっ、だめっ、んぁ、だ、ぁぐ、っく、」  狭山の肩に爪を立て、秀政の口元からはさらさらの液体が溢れ髭を汚す。唇を塞ぎそうになり、直前で思い留めて髭に口付ける。 「壊れる、ケツ穴壊れ、る!あぁぁ、やめ、ケツ、だめ、壊れっ…」  狭山は腰を止めた。秀政の悲鳴まじりの懇願とは裏腹に秀政の花芯はぎゅうぎゅうと締め付け狭山の腰の再始動を急かす。持っていかれそうだった。 「あ、ぁあ…、あ…」 「ッ、まだ壊れないでください」  お互いに息を整える。その間狭山は秀政の息子の源泉を撫でる。涙を零して噎ぶ一孔。収縮している。 「祈、さわ、るな、祈…っ!」  名を呼ばれると堪らなかった。秀政を押し倒して、両手首を顔の横に縫い止める。 「まだっ、動ッ…ぁはぁ、ンんっ、っ」 「もう…止まらないです…」  衝動が抑え切れない。花茎が誘い込む花芯を苛む。 「あっ、あっ、祈っ、祈っ、」  わざとなのだろうか。男が初めてではないのか。誰から教わるのか。天性の可愛さなのか。汗が額を伝う感覚が鮮明だった。 「な、んで…ッすか…!」  秀政の両手首を痛いほどの力で掴んでいた。そのまま掌へ移動し両手同士も重なる。指が重なる。強く握れば肉厚な掌が合わさり、無骨な指が狭山の白い手の甲に現れた。 「キス、しろ…キ、ス…んっ、ああっ」  秀政の奥を突きながら身体を倒す。秀政の唇が動く。余裕がないようだった。潤んだ目が狭山を魅了する。 「ケ、ツ壊れ…っんぁ、キスしろ、もぅ、っ…ケツ穴壊れ…っんっ、んぁ、っは…っキス、して…ッ」  唇を重ねた。 「ケツでイく、ケツ穴でイくぅ…っ!」  唇が離れて、秀政は呻いた。我慢出来ず舌を挿し込んで口腔内まで犯す。首の後ろに手を回して抱き締める。秀政の香りがした。 「祈っ…ああっあ、祈、ぃ…!」  びくっびくびくっ、びくん…と秀政の肩が跳ね、身体が痙攣する。狭山の腹に当たる湿ったものが爆ぜ、腹の複数箇所が濡れた。 「好き…ッ」  何度も短時間に収縮を繰り返し、奥に引き絞る内壁の刺激で狭山は薄いゴムの中で吐精する。しばらくゆるゆる腰を何度か突いて、蠕動(ぜんどう)が落ち着くと秀政の耳や首筋に唇を落とす。そして身体が秀政の上に落ちる。引き締まった狭山の腹に柔らかい肌が当たる。臍の下の野原がくすぐったい。 「坊っちゃん…やべえな…」  枯れた声がぼそりと言った。首筋に鼻先を当てる。 「すみ、ません…」 「坊っちゃんのイき顔、エロかった…」  狭山はむっとする。秀政の無自覚さに。 「これ、浮気になっちまうのかなぁ…」 「浮気に入ったら、…おれとしては嬉しいです」  狭山は腕を立たせて秀政の額に自身の額を当てる。 「っ、最近のガキまじどうなってんだぁ?」  秀政はぼそぼそ悪態を吐く。黙ったまま中から引き抜き、コンドームの口を縛る。自身の指ではここまでは出なかったという欲望を見ながら秀政の(なまめ)かしい掠れた声を聴いていようとした。 「好き勝手やりやがって、歳考えてくれって…」  声が止む。何か拭くものを探しに行こうとした狭山を誤解したのか、手を掴まれた。 「で、でもケ、ケツは坊っちゃんにくれた、から…その、忘れんなよ…、な…」  自涜のし過ぎで命を落とすことを「テクノブレイク」というらしかった。狭山の高校時代の友人がそう教えた。可能性としてなくはないが、どこか作り話めいた内容。一生に一度使うか否かのその単語。ただ狭山は、明日テクノブレイクしてないだろうか、などと甘やかな不安に襲われた。

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