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「お前またそんなもんだけでよく足りんなあ」 ズルズルと蕎麦を啜っている俺の目の前で肩肘をつきながら佳威が信じられないとでも言わんばかりの顔をした。 佳威は既に生姜焼き定食ご飯大盛りを食べ終えて手持ち無沙汰のようで、俺は暇潰しのターゲットにされたのだ。 「別に、普通だと思うんだけど…」 「そんなんだから細ぇんじゃねえの?」 「んな…!か、関係ないし!」 なんと失礼な。細いと言われて喜ぶのは女の子だけであって、男に言う場合それは貶していると言っても過言ではない。 いつもならここですかさずケーイチが反撃に出てくれるのだが、今日という日に限ってケーイチは委員長会に呼び出されて行ってしまった。 そして、初めて佳威と2人きりで過ごすお昼ご飯に俺はほんのり緊張をしているのである。 「いやいや、折れんじゃねえのかってくらい貧弱だろお前は」 「折れないよ!…確かによくヒョロイとは言われるけど、ガリガリなわけじゃ無いし標準体型だぞ」 「俺は多少肉付いてる方が好みだわ」 「あ、それ分かる。俺もちょっとぽちゃってしてる女の子好き。なんか柔らかそうで守ってあげたくなるというか…」 「だよな。なんで女ってみんなして痩せたがるんだろうな」 ほんとほんと、と同意しながら、再び蕎麦に手を伸ばす。ところで今なんで女の子の話になった? 「でも、いいよな~佳威は。そんだけ男前だったらタイプの女の子なんていっぱい寄って来るだろ?」 「……タイプねえ」 蕎麦を啜る俺を見ながら佳威が考える素振りを見せるので、あっ、と思い出す。 「Ωは別だよ?好みのフェロモンがあるのはちゃんと俺覚えてるし、そっちじゃなくて普通にバース関係なく見た目の話だからな」 「わーてるよ。…考えてみると俺今まであんまタイプだと思える奴に出会ったことねえかも」 「え、嘘だろ!?どんだけ理想高いの?」 驚きの一言に食べていた蕎麦を吹き出しそうになった。ギリギリの所で我慢して、手元にある水をゴクゴクと飲み干し蕎麦を胃に流し込む。 「あぶな。出そうになった…」 「そんな驚くことかよ。水いるか?」 佳威がたっぷりの水と氷が入ったピッチャーに、骨張った長い指を掛けるのを見て、お願いしますと空になったコップを渡した。 「…そもそも俺、バース基準でしか他人のこと見れねえんだよな」

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