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相変わらずなあなたへ ※
2月の初め、オレは無事に希望する美大に合格することができた。父さんや母さん、兄ちゃんたち、友達‥そして修くんが応援してくれたから、オレは最後まで頑張れたんだと思う。
辛かった受験勉強から開放されて、連日友達と遊びまくってたけれど、修くんとは予定が合わなくてなかなか会えないでいた。もちろん、電話やメッセージではやり取りしていたんだけど、日に日にモヤモヤが溜まってオレは爆発寸前だった。
だけど‥だけど!今日ついに、実家に帰省した修くんに会うことができた。173日ぶり、しかも明日はオレの誕生日だ。
「修作の部屋じゃ狭いでしょ?七海ちゃん、客間使っていいのよ」
「大丈夫です!まだ話したいことたくさんあるし、それに‥明日の作戦を立てなきゃなので!!」
「ふふっ、そうなのね。プレゼント気に入ってもらえて良かったわ」
「はい!超嬉しいです!」
さっきもらったテーマパークのチケットを片手にニッと笑うと、修くんのお母さんは嬉しそうに笑い返してくれた。
修くんの実家はいつ来ても居心地がいい。家の人たちはみんな優しくて、ご飯はめちゃくちゃ美味しくて。今日も真っ白いご飯を3回おかわりすると、修くんも「負けるか!」と4回おかわりしていたんだけど、最後の方は無表情だったからみんなで大笑いした。
明日がオレの誕生日ということを修くんが伝えてくれていたみたいで、食後に大きなバースデーケーキ(しかもイチゴの!)を用意してくれていたのはすごくすごく嬉しかった。そして修くんのお母さんが、「貰い物だけど」と言ってオレの大好きなテーマパークのチケットをくれたから、思わず抱きついてお母さんを困らせてしまった。‥で、明日急遽修くんと二人で行くことになったという訳なのだ。
「それじゃあ、先に休むわね。お風呂沸いてるから、タオルとか自由に使ってね」
「はい、ありがとうございます!おやすみなさい!」
修くんのお母さんを見送って、オレと修くんも居間をあとにした。修くんの部屋は離れの二階にある。修くんの後について中に入ると、1年ぶりくらいだけどちっとも変わってなくてなんだかとても安心する。オレ用の布団を抱えてふらついている修くんに後ろから抱きつくと、そのまま布団ごと前のめりに倒れて「危ないだろ」と怒られてしまった。
「だって早くくっつきたかったんだもん」
修くんに絡みついたまま布団の上でじゃれあっていると、ふと目が合う。久しぶりに修くんの顔をちゃんと見たから、なんだか急に恥ずかしくなってしまった。
「きゅ、急に照れんなよ!」
「だ、だって‥173日ぶりなんだもん‥」
「‥数えてたの?」
「うん」
しばらく間を開けて、修くんはぷっと吹き出した。
「なに笑ってんのー?!」
「ナナは相変わらずだなって思って」
「どういう意味?」
「んー?ナナが可愛いって意味」
「〜〜〜っ!」
超恥ずかしくて、でもすごく嬉しくて。オレは真っ赤になりながら修くんの唇に触れるだけのキスをする。
「作戦、立てるんじゃなかったの?」
「オレがあの場所大好きなの知ってるでしょ?頭の中ではもうカンペキ!」
「ははっ、そっか。頼もしい」
「それよりも‥もっとチューしたい」
そう言うとオレはもう我慢できなくて、そのまま修くんの上に被さって、返事を待たずにキスを落とした。頬を撫でながら何度も唇を重ね、その手を修くんの大きな手でそっと包みこまれると、久しぶりに感じる温かさでちょっと泣きそうになる。そんな気持ちを誤魔化すように、舌で修くんの唇をぺろりと舐めてニシシっと笑うと、修くんははにかんで、同じようにオレの唇を舐めてくれた。
「オレさ、今日エッチする気マンマンだったんだよ」
「なんで過去形なの?」
「だって‥‥エッチしたら絶対夜ふかししちゃうもん‥。明日はせっかくのデートなんだよ?思いっきり楽しみたいじゃん?!」
「‥‥ぷっ、あはは!俺○ッキーに負けた〜」
「えっ、あ、違‥っ!ミッ○ーも好きだけど、修くんも好きだから!!修くんと一緒にミッ○ーを見たいの!!」
必死に説明するオレを見てなぜかさっきから爆笑している修くん。「なんで笑ってんの?!」って聞いたら「俺、愛されてんなーと思って」なんて答えるから、面食らって赤面してしまう。
「それ、答えになってなくない?」
「そうかな?嬉しくてつい笑っちゃった」
「‥変なの」
「変かも。‥ついでにコッチも」
「え‥わっ!」
オレの手を握った修くんは、そのまま自分の下半身に押し当てる。大きくなった修くんのは、ジーンズ越しにも分かるほどだ。
「最後までしなければいいんだよね?そしたらさ‥久々に一緒にしない?‥俺、結構限界なんですけど」
「‥‥その手があったか!」
真顔でそうつぶやくと、修くんはまた大笑いした。
ズボンと下着を下ろして向かい合う。‥なぜかお互い正座で。
「よ、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
改めて座り直すと妙に緊張してしまって、二人して他人行儀な挨拶を交わす。その姿がなんだかおかしくて、同時に吹き出してしまった。
「なんだコレ」
「ホント。‥ねえ修くん、そっち行ってもいい?」
「‥うん」
優しく頷いて手を差し伸べてくれたから、のそのそと修くんの方に近づいてギュッと抱きついて‥そういえば、と思い出したようにさっきのキスの続きをする。唇や舌の感触を確かめるように甘く噛んで、優しく吸って。それから唇を塞いで、少しずつエッチになっていくキスに体が熱くなる。
「‥ん、はっ‥‥あ、」
とろけそうなキスで敏感になった下半身を不意に触られて思わず唇が離れる。吐く息と一緒に甘ったるい声が漏れてなんだかすごく恥ずかしい。手を伸ばしてオレも修くんのにそっと触れると、オレのと同じでもういっぱいに勃ち上がっていて、修くんもオレと同じ気持ちなのかなって思ったら心の奥がじんわりと温かくなる。緩く握るとそれだけで手のひらに熱を感じて、ゆっくり上下させると修くんのはビクビクと小さく痙攣した。
「ナナもう少しこっちにきて。一緒にしよ」
「ん‥」
コクンと頷いて修くんの膝の上に乗ると、欲情した下半身はピタリとくっついてしまう。
「俺の、触って」
言われるまま修くんのを握ると、オレの手の上に修くんの手のひらが優しく重なって、ゆっくりと一緒に扱き始める。触れ合っている部分からドクドクと脈打つのが伝わってきて、修くんの動きに合わせてオレも手を動かすと徐々にお互いの先走りが絡み合って、擦れるたびにグチュグチュと水音を立てた。
「う、ぁ‥っあ‥は、っ‥あ」
気持ちいいところを何度も刺激されて、もうなんにも考えられなくなって。うまく呼吸することもできなくて、過呼吸気味にただ無意味な音だけが溢れてしまう。
「ねえナナ‥気持ちいい?」
耳元で途切れ途切れに囁かれ、かかる吐息にビクンと体が反応する。こんなの‥気持ちいいに決まってる。大好きな修くんの温もりを、優しさを体いっぱいに感じて、オレは気持ちいい以上の言葉を伝えたくて必死に探した。
「‥あ‥っ、‥き‥‥修くん、大好き‥っ」
手の動きが止まって目の前で紫色の瞳が揺れる。でもすぐにキラキラと輝いて、オレはその綺麗な瞳に釘付けになってしまう。
「俺も大好きだよ、ナナ」
いつもそうやって真っ直ぐに応えてくれるから、オレはこれからもずっとずっと、修くんと一緒にいたいって思うんだ。
見つめ合って触れるだけのキスをして、今度はさっきよりも速く大きく手を動かす。あっという間に限界がきて、強すぎる快感に思わず修くんに縋り付く。
「は‥っあ、も‥イく‥っ」
「‥俺も‥‥っ」
重なる手にグッと力が入り、同時に欲を放つ。手のひらに生温かさを感じ、射精後の疲労感でオレはそのまま修くんの肩にもたれかかった。
「大丈夫?」
「うん。‥気持ちかった‥」
「ははっ。俺も」
まだ少し火照る体に幸せの余韻を感じながら、二人揃って照れ笑いした。
「何か久しぶり」
「そうなの?ナナが一人でしてなかったなんて意外‥」
「え?してたよ。そうじゃなくて‥いつも後ろでするから‥前は久しぶり」
ティッシュで後始末をしながらそんな会話をする。修くんからの返事がなくて、そんなに意外だったかな‥と不思議に思って顔を覗き込むと、ギューッと力いっぱい抱きしめられてビックリしてしまう。
「‥修くん?」
「エロすぎるんですけど」
「え?なにが??」
「はーーー‥‥‥したい」
頭いっぱいにはてなマークを飛ばしながら、とりあえず修くんの頭をポンポンと撫でてみた。
「あ、そうだ!」
タイミングを逃して大事なことを言い忘れていたのに気がついたオレは、バッと手を上げてオーバーリアクションと共に修くんにオレ的最新情報を伝える。
「オレ、下宿先決まったよ!」
「マジで?大学の近く?」
「うん!修くんのアパートも1時間くらいで行けるのー!」
「そっ‥か。なんかまだ信じられないや」
「うん、オレも。‥それでね、卒業式終わったらすぐ奈良に行くから、そしたら‥」
「うん?」
「いっぱいしよ‥?」
また修くんからの返事がないなぁと思っていたら、代わりにさっきよりも大きなため息が聞こえてきた。
「はーーーー‥‥」
「どっ、どうしたの??」
「ナナは相変わらずだなーって」
「それ言うの二回目!」
「だって‥ナナがナナのまんまで嬉しいから」
本当は修くんに会うの、少し怖かったんだ。こんなに長い間会わなかったのは初めてだから、前みたいに話したりふざけたりできるかなって。‥だけどそんな不安、優しい笑顔をたくさん見たらいつの間にかなくなってた。
「今度は朝までする」
真面目な顔で言うからなんだかおかしくて、
「修くんだって、修くんのまんまだよ!」
オレは大笑いしながら修くんの肩をバシバシ叩いた。
「あ!12時だ」
修くんの言葉で壁掛け時計に視線をやると、針は12時ちょうどを指していた。修くんが俺の方を向いて改まって座り直したから、オレもおんなじように本日二回目の正座をする。
「ナナ、誕生日おめでとう」
「‥あ、そっか!修くんありがとう!!」
「明日は楽しみだな」
「うん!」
修くんと付き合い始めて三年目。オレの誕生日を祝ってくれるのも三回目。毎年こうやって一緒に過ごせて、オレはすごく幸せだよ。
おわり♡
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