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時が満ちれば 7

「ヨウ! ヨウ! 何処だ?」  隣室から俺を探すジョウの声がする。 「あっ……」 「ふっ……いいところで邪魔が入ったな。この続きはまたの機会にしよう、綺麗な近衛隊長さんよ」  そう言って、キチは煙のように姿を消した。 「ヨウ? ここなのか」  ジョウの足音がこの部屋に近づいてくるのが分かり、俺は慌てて乱れた着衣を直し、しつこく嘗め回され濡れた唇を※腕貫で急いで拭った。 ※手首からひじのあたりまでをおおう筒状の布。皮膚を保護したり袖の汚れを防ぐもの。また腕袋のこと。 「ジョウすまない。少し眩暈がして……ここにいた。悪かったな」 「大丈夫か? そういえば顔色が悪いぞ」  部屋に入って来たジョウが、心配そうに俺の顔を覗き込む。その真剣な眼差しに罪悪感が芽生え胸がチクリと痛んだ。だが……ジョウには知られたくない。 「もう大丈夫だ」 「そうか?本当にそれならいいが……隠し事はするなよ」  ジョウは俺の行動を訝しんでいるようだが、余計な心配を掛けたくない。大事なんだ。ジョウは俺にとって…ジョウが生きがいだと言っても過言でない。だから先程……キチから淫らな扱いを受けたことを気づかれたくない。 「それで王様の診察は終わったのか」 「あぁ……」  途端にジョウの表情が曇っていく。あぁ……やはり手立てはないのか。王様に万が一のことがあれば、あのキチが次の王座につき、俺はその近衛隊にならざるえない。先ほど俺にしたことを考えても、俺の未来は暗く険しいだろう。今度また理不尽な目に遭ったら、きっともう生きてはいけぬだろうな。そう思うだけで胃がキリキリと痛む。 「あの……入ってもいい?」  その時、部屋のドアの向こうから女の声がした。 「あぁどうぞ」  ともかく赤い髪の女から話を聞かないと。どのような結果であれ出来ることに最善を尽くしたい。俺が今お護りしている……実の弟のように愛しい王様のために。 「包み隠さずに、診察結果を聞かせてくれ」  緊張でゴクリと喉が鳴ってしまう。  一縷の望みがあることを切に切に……願ってしまう。

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