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今、その時 3
木漏れ日の中……眩しいほどの想いの籠った表情でジョウに見つめられ、甘い口づけを落とされれば、俺の心は幸せで満ち足りていく。
この先も君がいてくれるのなら、俺は人間らしく生きていける。
君が傍にいてくれ俺を想ってくれて、この世の色が変わった。
死んだように過ごしていた俺の日常は、君に口づけされたあの時から色づいた。
君に抱かれた時から、再び生きている喜びを感じ出した。
今、俺の時は穏やかに満ちている。多くは望まない……ジョウさえ傍にいてくれればいい。だから俺を置いて……絶対にどこへも行くな。
「離れがたいが、もう交代の時間だ。行くぞ」
ジョウと別れ一旦部屋に戻り、近衛隊の鎧を身につけ剣を持ち、王宮の警備に向かった。部下と交代の時が迫っている。ところが王宮の門を潜った途端、部下が俺を探していたらしく、血相を変え慌てて近づいて来た。
「隊長っ大変です!」
「一体どうした?」
「王様のお加減が悪いのです、先ほどから高熱でうなされております!」
「何だと!すぐ行く!」
昨夜はお元気そうだったのに……急変するにはまだ早い!それに周りに気が付かれてはならぬ!だが王の寝室へ足を踏み入れた途端背筋が凍った。なんと王様のすぐ横にキチがしたり顔で立っていたのだ。
なんてことだ!俺がジョウと会っている間に、とんでもない失敗を犯してしまった。
「これはこれは美人な近衛隊長殿、何処へおいででしたかな、あなたの到着が遅れたお陰で、私はとても有意義でしたよ」
「な……何を?」
ニヤニヤと絡みつく視線で俺を撫でまわすように見てくる視線を振り払い、キッと睨み返すが、動揺していた。
もしや王様のご病気を知られてしまったのか。ここの警備はどうなっていたのだ。
「誰がキチ殿をここに入れた?」
振り返って部下を見ると、皆蒼白な顔で首を横に振っている。だが一人足りない…?
「隊長殿が信頼している部下にだって裏切り者は存在するわけでねぇ。これはまぁ世の常だ。恨むでない。くくくっ」
笑いながらキチが告げる言葉に、怒りで気が狂いそうになる!何ということだ!
「くそっ!」
一歩また一歩……キチが俺を壁に追い詰めていく。
「王様は重病でしかも死期が近いようですな。私付きの医官が先ほどそう診察しましたよ。くくくっ、これで美人な隊長が私に抱かれる日も間近というわけだ。昨夜はお預けを喰らったわけだから、待ち遠しいものだな」
そう耳元で囁かれて、気が狂いそうになる。嫌だ!もうそのようなことは二度としたくない。ジョウに清められた躰を汚されるなんて、受け入れ難い!無理だ!
「やめろ!」
「諦めた方が賢いですぞ。次の王は私だ」
「まだ王様はご健在だ!」
「死期が近いでないか。もう死んだも同然だ!」
押し問答をしていると、あの赤い髪の女が部屋に押し入って来た。
「あなた達、やめなさい!!」
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