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心は氷の如く 5

 そんな……  こんなに簡単にこんな男の言いなりになるなんて油断していた。いとも簡単に崩れ落ちていく己の躰が信じられない。  昨日まで俺の大切な年若き王様が健やかに過ごされていたこの部屋の床の上に、仰向けにさせられた。  動かしたい躰。  動かない躰。  鎧を外され、徐々に無防備な姿にさせられていく己の身上を呪った。キチの長い爪が肌に食い込む度に、凍りつつある俺の躰に鋭い痛みが突き刺さる。衣の袷を一気に左右に開かれて、上半身が露わになった。 「や……やめろ」  キチは唇を歪め、高々と嘲笑う。 「お前、やはり前王に相当やられたな、くくくっ」 「見……るな……」  キチが指先で前王につけられた醜い愛撫の痕をつーっと音が出るように、執拗に強く撫でてくる。その度に躰が飛び跳ねる程の嫌気が沸き起こる。 「さ……触るな!」  無駄だと思っても口から抵抗する言葉が次々と飛びてしまう。身を捩りたくてもキチの氷攻により躰の自由が効かない。  キチが俺の乳首を唾液をたっぷり含んだ舌先でべろりと舐め揚げる。 「くっ……」  羞恥心と嫌悪感でドロドロになっていく。キチが上半身に舌を這わす度びに、その舐められた箇所が氷の塊のように冷たくなっていく。  息が苦しい。  朦朧と霞む視界にジョウの姿を見る。なんとも言えない表情で俺のことを見つめているではないか。  幻でも、見るな!  俺のこんな姿を!  ジョウ許せ。抵抗したいのに両手両足が氷のように動かない。  俺はこんなに弱くない。こんな奴の言いなりになんて、ならないはずだった。 「想像通り近衛隊長の躰は美味しいな。さぁもっと喰わせろ」  キチは乳首の周りを執拗に舐めまわした後、俺の唇をちゅうちゅうと音が出る程、きつく吸い始めた。そのおぞましい感触と吐き気を誘う臭気に必死に頭を左右にふって逃れようとすると、首筋に手をあて氷攻で微塵も動かないようにされてしまった。 「うっ…」  いよいよ自由を奪われ、全く抵抗出来ない状態になった躰。込みあげてくる悔し涙を堪え、叫ぶしかなかった。 「やめろ! やめてくれ! もう沢山だ! 無理やり男に抱かれるなんて! しかもお前になんて!」  しかしキチはそんな言葉は無視し、俺の下衣に手を這わせてきた。衣を割って長い爪が俺の蕾を引っ掻き、そして遠慮なく侵入してくる。  気色悪い!  冷たく痛い!  これ以上触れるな!  もう完全に凍ってしまう! 「あっ……あ……嫌だ!」  せめてもの最後の抵抗だ。もうこれ以上の力を出せない。  俺はくすぶっていた雷光を必死に発し、これ以上躰が凍らないように抵抗した。だがすぐにその雷光と氷の衝突は、キチをこの上ない快楽へと導くだけのものだということに気が付き、激しく後悔した。 「おおお! お前の雷光が私の氷功とぶつかると、何とも言えない位ここを締め付けてくれるな。最高だ。もっと雷光を出せ! 最高だ! お前のここは。さぁ挿入するぞっ」 「やっ……めろっ!!」  キチの興奮した太いものが俺の躰に貫いた瞬間、まるで氷の塊を撃ち込まれたような衝撃を受け、もはや抵抗の言葉も引っ込むほどの、激しさと痛みに息を呑むしかなかった。 「あうっ」  目からは、涙が噴き出た 全身の毛穴から冷たい汗が噴き出た。  駄目だ。このままでは凍ってしまう。まるで躰の中に氷の塊がぶち込まれたようだ。  さらにそれを上下に動かされると、冷たさが躰全体に広がり、いよいよ完全に凍り付く恐怖で気が遠くなった。  俺はそれでも最後の力を振り絞った。それは躰を完全に凍らせないための自己防衛だった。  残る力でもう一度だけ雷光を放った。  ビチビチビチッ!!!!!  繋がった二人の躰は感電したように震え、目も開けられない程の眩しい稲妻に躰が包まれた。そしてその次の瞬間キチは俺の躰に不快な生暖かい液体を大量にドボドボと吐き出した。そのおぞましい感触を躰の奥深くで受け止めた俺の眼からは……一筋の涙が零れ落ち、そして意識を飛ばした。  受け入れられない現実から逃れたかった。 ****  胸から零れ落ちた月輪は輝きを失った。  漆黒の闇夜だ。  月明かりも届かない暗い森に、俺は独りきり。 「ジョウ……」  愛しい人の名を口にしても、何の返答もなく闇夜に吸い込まれていくだけ。  許して欲しい。  守れなかった。  君が清めてくれた躰だったのに。  躰が冷たい。  このまま凍ってしまうように寒い。  助けて欲しい。ジョウ……

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