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春の虹 ~重なる月・3~
ヨウの引き締まった形の良い美しい唇を、私はそっと吸った。
するとヨウもそっと吸い返してくれる。
強く吸えば強く吸い返してくれる。鏡のように私と呼応してくれる。
舌をそっと差し入れると、その舌を優しく迎え入れてくれた。
口づけとはこんなに甘美なものだったのか…
我を忘れてヨウの唇を吸い続け、そして形のよい喉仏も啄み…ヨウの長髪に見え隠れしていつも触れてみたかったうなじに、髪をかき分けて…口づけた。
ヨウの喉仏が緊張のあまり上下する度に、芳しい花のような香りが鼻をよぎり一層欲情した。
同じ男なのに、こうも違うのか。
ヨウ君は綺麗だ。
続いて…ヨウの衣の胸元に手をやる。
「ヨウ、衣を脱がしていいか」
「あぁ…ジョウのしたいように…」
小さく頷くヨウの躰は、少しばかり震えていた。
私の手も緊張で震える。女を戯れに抱いたときとは違う、同性の心から欲する人を抱くという行為に緊張が漲る。
ヨウの腰紐を解き、上半身の衣の胸元から手を入れ、そっと下へ降ろした。
月明かりに照らされたヨウのよく鍛えられた躰はしなやかで、息を飲むほど美しく、そして悲しかった。
想像通りその躰には、いくつもの細かい爪痕がついていた。
私の視線を感じたのか、ヨウは躰を見られるのを恥ずかしそうに布団の中へ身体を潜らせ、顔をそむけた。
そんなヨウの横に腰かけ、背けた顔をそっとこちらへ向けさせると、溜まらない程悲し気な表情を湛えていた。
「どうしてそんなに寂しそうな顔をする?」
「それは…お前があんまりにも優しく俺に触れるからだ。優しく衣を脱がしてくれ優しく口づけしてくれる…俺はこんなに優しく肌に触れてもらったことはないから、戸惑うのだ。心を殺して受け入れる事しか知らぬ。どのように反応すればよいのか分からないんだ。…それに…俺には傷痕が…」
そう答えるヨウが、愛おしくて溜まらなくなった。
「ヨウ、君は汚れてない!君の過去も含めて、私はヨウのことを想っている。ヨウの躰に残ってしまった傷痕、それも私が愛おしむヨウの一部だ」
「ジョウ…ありがとう。本当に俺でいいのか…」
「あぁ…ヨウのすべてを見せてくれ」
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