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赤い髪の女 4
任務を終え夜も更けた頃、そっとジョウがいる医局へ足を運んだ。
「ジョウ、入っていいか?」
「待っていたよ」
ジョウは山のような文献を引っ張り出し、なにやら必死に調べている。
「王様の具合はどうだ?」
「少し足を痛がっていたが、手を繋いで差し上げたら、すやすやとお休みになられたよ」
ジョウは暗い表情をしたまま、書物に目を落としながら呟く。
「そうか…ヨウ落ち着いて聞いてくれ。残念ながら王様の病気はとても進行が速い…」
嘘だ!昨日まで飛び跳ねて犬と遊んでいた無邪気なお方なのに。
まだ12歳になられたばかりの幼い王様だ。
「王様は、一体なんの病気なんだ?」
ため息をつきながら丈が話したのは、希望のない内容だった。
「残念ながら今は治療法がない。私が過去に見た事例だと…そのうち足だけでなく全身が痛み出し、今足に出来ている腫瘍が増え、それが肺に到達して腫瘤を作ってそのまま息が出来なくなり、亡くなってしまう」
「っつ…そんな!」
半年なんて、そんな。
王様はやっと王座に付かれたばかりで、俺が近衛隊になって初めて心からお護りしたいと思える方なんだ!
王様が亡くなられるなんて信じられぬ。
父上や母上のおられる世界へ旅立ってしまうというのか。
「助かる方法はないのか。なんでもする!」
「だが、残念ながら今のこの国の医術では無理だ」
「そんなの信じない!助かるためなら何でもする。どんなまじないでも!」
「…まじない?ヨウがそんなこと言うなんて珍しいな」
「ジョウ…王様は俺のこと、兄の様に慕ってくれてるのだ。俺にはもう父も母もいないから…
せめて王様だけは守りたい。大切な人だ。肉親のように」
「ヨウ…だが、今の医学では手の施しようがないんだ。残念だが…」
「ジョウがそんなこと言うなんて酷い!俺は諦めない!」
「ヨウ…落ち着いて、もう少し私も調べてみる」
****
そのまま俯いて肩を震わすヨウは、傷ついてあの告白をした夜のように儚げで、その震える肩を抱きしめてやりたくなる。
「ヨウ…ここへ坐れ」
すがるような眼差し、心細そうな表情だ。
近衛隊長の面影は今はない。
私の想い人が今怯えている。
なんとしてでも手助けしたい。
そう強く思うよ。
「ヨウ…来い」
「ジョウ…うっ…うっ…」
その言葉に背中を押されるように、私の机の上に置いた手の上に手を重ね、そこに額を付けて、祈る様に肩を震わせながら、むせび泣く。
その肩にそっと手を置いて、背中をゆっくりと撫でてやる。
「ヨウ…これは言おうか言うまいか迷っていたのだが、この書簡を見てもらえないか?ここに気になることが書いてある。役に立つか確信はないことだが…」
私は先ほど届いたばかりの地方の役人からの書簡を、机に広げた。
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