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赤い髪の女 6
薬を保管するための倉庫が、医局の奥にはある。
そこは扉が二重になっているため、中の声が外に漏れにくい構造になっていた。
小さな天窓から月明かりが静かに差し込むその薬品庫へ、二人でそっと潜りこむ。
「ヨウ…少しくつろげ、鎧も今は外せ」
後ろを向かせヨウの重たい鎧を外してやる。
そしていつも手に握っている剣も、そっと外してやる。
1日中王を護り続ける、闘い続ける躰にも休息は必要だ。
「ジョウ…あまり時間がない。また宿直に戻らねば…」
焦る様に言うヨウの首筋に顔を埋め、スンと息を深く吸い込むとヨウの香りがする。
強い武将として周りから恐れられているヨウの躰の奥から、こんなに香しい花の香りがするなんて、誰も知らないだろう。私だけが知っている秘密だ。
この見かけと不釣り合いの香りを嗅ぐと、すぐに己のものが高揚してしまう。
「ヨウ…ここでいいか?狭いが」
耳を赤く染めたコクリとヨウが頷く。
「…温めて欲しい…」
一気に押し寄せた不安を自分自身で処理できない時、ヨウの躰は以前のように氷みたいに冷たくなってしまう。
そっと下衣の袷から手を忍ばせると、すでにそそり立っているヨウのものに触れることが出来た。
私はそこをきゅっと優しく握るように触れてやる。
「あうっ」
「こんなになっているのに表面は冷たい」
「ジョウ…」
「ヨウ思いつめるな。何事にも必ず解決する方法があるはずだ。私はそう信じる。ヨウとならきっと解決できるはずだから」
扱く手を速めていくと、次第に氷のような冷たさは失せ、温かみを増してくる。
やっと血が通ってきたようだ。
「ヨウ…怯えるな」
「んっ…」
薬品棚に手を突き、抜けそうな腰を一生懸命支えるヨウの後姿がいじらしい。
強い武将の弱った背中だ。
その姿に心を奪われてしまった。
この姿を癒したくて抱いた。
ヨウを温めてやりたい…その気持ちだけが、どんどん膨らんでくる。
「愛おしい…」
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