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第29話

慎『理由、あるんだよね。』 柳河くんの方ではなく、幸の方を向いて聞いた。 幸『ごめんね…僕の勝手な理由なんだ。 慎君には初めて会った時から失恋した僕を慰めてくれてた。でも今思うと僕はその優しさに甘えてただけだってやっと気がついた。』 確かに初めから知っていた。 幸は俺を好きなのではなく、ただ愛してくれているという実感が欲しいだけなんだって。 だから今日告げられた別れの言葉だって、 あぁそうかとしか思えなかった。 いつも付き合っては、このように別れを告げられるしね。 でも今回はいつもと違った。 幸『あの、違ってたら申し訳ないんだけど…。』 慎『うん?』 幸『慎君も、同じだよね。』 同じ…って、は? 慎『どういう…』 幸『勿論慎くんは毎日僕に愛をくれたけど、僕を好きな風には見えない時があったんだ。 ただ愛情を欲してる時があるっていうか…。』 なんだよそれ。 幸『慎くんは、誰かに愛されたいんだよ。』 慎『そう、なんだ。』 俺、そんな事考えてたんだ…? 幸『…今まで、ありがとう。 これからも何かあれば宜しくね。』 柳河『こいつは俺が大事にするから…世話になったな。』 慎『うん、幸をもう一回悲しませたら殺しに行くからね?幸せになれよ…。』 二人にそう言ってその場を離れる。 あぁ、また1人になってしまった。 幸にはすべてお見通しだったのかな…。 疲れた、でも今日は鈴華が心配だし…戻るか。 そのまま授業中だけど、教室に戻る事にした。

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