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第53話

頭を急にブンブンと振り出す穂澄。 穂澄『取り敢えずは風呂だな。先に入るか?』 慎『ううん、俺は後で大丈夫!』 せんせ…穂澄の家なんだ、お邪魔して迷惑かけた挙句泊めてまでもらえるんだ。 だからお風呂くらいは流石に先に入ってもらいたい。 穂澄『わかった、寛いでていいからな?』 慎『うん、ありがとう。』 返事したことを確認して浴室へ消えていった。 俺は引っ張られるようにベランダに出る。 暗くて、吸い込まれそうな空を見上げながら息を吐く。 慎『ふぅ…』 決して溜息ではない。 疲れたのでもない… 一気に心が満たされて出たもの。 冷たい風が頬を撫でる。 いま、寂しくない…。 すると電話がきた。 慎「すず?」 そう、電話の相手は鈴華。 鈴華「しんしん、調子どう??」 慎「それがさ、胸がいっぱいなんだ。」 慎が優しい声でこんなことを言うもんだから鈴華は好奇心まみれ。 鈴華「なになに?先生と何かあったの?!」 慎「ん、今せんせーの家。」 鈴華「へ?!」 電話での鈴華の声に、慎はくすくすと笑った。

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