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しょたヤンで何が悪ぃ?/眼鏡先生×褐色生意気吊り目/おにしょた

「ミサキがパパ活やってる?」 六年二組の担任をやっているシマ先生は耳を疑った。 放課後だった。 そこは教室や職員室ではなく、人気のない渡り廊下の隅っこで、窓には夕日がいっぱいに満ちていた。 「見間違いじゃないのか」 なかなかドライな性格で必要以上に生徒に干渉しない、非フレンドリーなタイプ、オンでもオフでも喜怒哀楽に乏しくリアクションが薄々なシマ先生だが。 ランドセルを背負い、浮かない表情をした男子児童二人の報告にちょっとばっかし驚いていた。 「おれたちも最初は思ったよ、なぁ?」 「うん。<あんな格好>してたし……でもミサキだった。間違いないよ」 ミサキというのは彼らのクラスメートで、シマ先生が受け持つ教え子であった。 ちなみに男子だ。 短めの白アッシュ髪で、褐色肌で、耳にはピアス、生意気そうな吊り目の、学校で一番派手目立つルックスをした、 『宿題? 忘れた』 『体操着? 忘れた』 『給食費? 使った』 『リアクションだけじゃなくて黒板に書く文字もうっす、ぜんっぜん見えねー、チョーク節約してんのかよ』 『勝手に人のノート覗いてんじゃねーよ!!』 シマ先生に対して絵に描いたような反抗期真っ只中の児童だった。 「スーツのおじさんと歩いてた」 「お父さんじゃないのか」 「違うと思う、次の日にはまた別のおじさんと歩いてたし」 「また別のおじさん、か」 「ぶっちゃけると、おれたち、塾の帰りにミサキが別々の日に別々のおじさんと二人一緒いるとこ、五回見ちゃったんだよ」 「五回、か」 「五回目でさすがにやばいと思って報告したわけ」 「ミサキ本人には聞いてみたのか?」 ミサキの友達でもある二人は顔を見合わせ、揃って首を左右に振った。 「なんか怖くて聞けない」 次に、何やら意味深な眼差しでシマ先生を揃って見上げてきた。 「……相手のおじさんたちなんだけど」 「……共通点があったっていうか」 つまんねぇ、今すぐ帰りてぇ、ミサキはいつも思う。 「実際に会った方がすごく魅力的だね、ミサくん」 実際に会ってみて期待を裏切られて後悔する……。 夜の繁華街。 SNSで知り合った年上の男達とこうして会うのは何回目になるだろう。 もうやめよう、そう思っても、探してしまう。 本人じゃなきゃ意味がないのに、少しでも似た片りんを拾い上げると、縋って、メッセージを送ってしまう。 ……ばかみてぇ……。 「どーもごちそーさまでした、じゃ、この辺で」 食事をして切り上げる、次の再会は二度とない、それがいつものパターンだった。 だが、しかし。 「もうちょっと一緒にいたいな」 今日の相手はミサキのことをえらく気に入った。 肩を抱かれ、別れを渋られて、ミサキは仏頂面になる。 「もういねーよ、帰っから、手ぇ離せよ」 「いいなぁ、そういう反抗的な態度」 「は?」 「組み敷いて力ずくで言うことをきかせたくなるよ」 肩を抱く手に力が入り、痛みを覚え、ミサキの吊り目はちょっとばっかし怯えた風に震えた。 それがまた相手の興奮を煽り、週末で賑わう夜の街中、死角となる場所に引き摺り込まれて狡猾な牙を剥かれようとした矢先に。 「すみません、当校の生徒に何か御用でしょうか」 ミサキは幻聴かと思った。 怖々と振り返り、騒然と行き交う酔狂な人々を背景にして彼の姿が視界に写り込んでも尚、幻かと思った。 自分があんまりにも恋い焦がれる余りに見えた幻覚かと。

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