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相思相愛うさぎとかめもどき/天然絶倫×コミュ障イケメン/高校生
放課後、大手チェーンのハンバーガー屋。
彼が店に入ってくると十代女子はおしゃべりをわざわざ止めて一斉にカウンターに視線を向ける。
「△△高の輪廻クンだ」
「やばぁぃ。かっこぃぃ」
「隠し撮りしてぇ」
巻島輪廻 、高校一年生。
身長171センチでスタイル良し、カーディガンにチェックのズボン、スクバにローファー。
髪は派手過ぎない流行色、靡いている、風もないのに遊ばせ気味な毛先がサラサラ靡いている。
ニキビ一つないしっとりお肌。
リップクリームでも塗ったような艶やか唇。
吊り目でクールな小悪魔系。
女子受け抜群なイケメン高校生・巻島、番号札を受け取って窓際のテーブルに友達と着こうとした。
「ごめーん、輪廻クン」
声をかけられて視線を向けると、屈めば一発ぱんつ丸見えスカート状態の他校女子が二人、通路に立っていた。
「ウチらといっしょ食べない?」
積極的お誘いに対して、表情を変えない巻島はふいっと顔を背けて一言だけ答えた。
「ムリ」
素っ気ない態度を怒るでもなくツワモノ女子二人は「邪魔してごめんねー」と自分らのテーブルにあっけらかんと戻って行く。
彼等のやりとりをガン見していた他女子は口々に囁いた。
「やっぱブレねぇ、輪廻クン」
「クール男子だ」
やがて巻島とその友達が着くテーブルに注文していた品が運ばれてきた。
巻島は一向に手をつけようとしない。
バーガーをもそもそ食べ始めた友達は窓の外を見据えている彼を特に気にするでもない、もそもそもそもそ、サイドメニューのナゲットも食べていく。
「なんか怒ってなぃ?」
「イライラしてなぃ?」
別に怒っているわけでもイライラしているわけでもない。
人見知りコミュ障なだけだ。
あんな風に知らない人にお誘いされたり、街で声をかけられると、気分が落ち込む、頭痛や吐き気を催す、それだけだ。
クラスメートでもご近所さんでも会話や視線は露骨に避ける。
あからさまに拒んでしまう。
女子は「クールなんだぁ」「そこもいい♪」となるが男子は「は?」「こいつ付き合いづら」となる。
よって友達もろくにいない。
唯一、そばにいてくれるのは。
「マキ。ポテト。食べていい?」
この大町円 くらいだ。
身長176センチ、背の順に並ぶと運動部ゾーンに紛れ込む、本人は帰宅部だが。
黒セーターを腕捲り。
短め黒髪は風が吹いてもあまり変化がない。
落ち込んでいた巻島が力なく頷けば、もそもそ、大町はポテトを食べ始めた。
早速催した頭痛に食欲が失せて頬杖を突いていた彼は、チラ……、食べている大町にこっそり視線を向けた。
大町、食べてる。
もそもそ食べてる。
ほっといたら全部食べるんだろーな、人のポテト。
決して大町を心の中で貶しているわけではない。
むしろ逆だ。
唯一親しくしてくれるこの友達のことを、巻島は、それは大事に大事に思っていた。
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