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ナイショな家庭訪問/美形先生×平凡パパ/イケメンわんこ先生×ツンデレパパ
「そちらの良太 君はとても芯が強く、クラスメートみんなに慕われています」
半休をとって午前中にできる限りの業務を慌ただしげに済ませて退社した進藤真 、二十七歳。
今日は家庭訪問の日だった。
着替えもせずにワイシャツを腕捲りして2LDKアパートのリビングを掃除し、お茶の準備をし、ちょっと一息つくかとソファにぐで~~と横になっていたらチャイムが鳴った。
「おとーさん、せんせー、連れてきた」
現在八歳、小学校二年生の息子が担任を連れて帰ってきた。
「じゃあ、おれ、象さん公園で五月くんと遊んでくる」
「えっ、あの、良太一緒じゃなくてもよかったでしょうかっ?」
今にも玄関から通路へ飛び出そうとしている息子の良太にあわあわしている真、そんな保護者に彼はゆっくり微笑みかけた。
「ええ。問題ありません。良太君、車に気をつけて。行ってらっしゃい」
やたら見目麗しい外見をした小学校教諭の御船 、二十九歳。
インナーから足元まで高級インポートでさり気なく揃えて洗練された身だしなみ。
パーフェクトな容姿端麗ぶりと同様に、何かと口うるさいPTA及び怪物保護者をも黙らせる論に長けた優秀な唇。
御船先生って俳優さんみたいだ。
毎回思うけど、美形力、半端ない。
「良太君は素晴らしい美点を秘めています」
そんな完成された美形先生に我が子を褒められて真は目を見張らせた。
「ウチの良太が? ですか?」
「機微を感じ取ることのできる感性の持ち主です」
きびって? さとうきびのこと?
「先ほども。進藤さんにどこに誰と行くのかちゃんと伝えて遊びに出かけました」
「? 普通のことじゃないですか?」
床に正座していた真はキョトンした。
リビングのソファに優雅に腰かけた御船は首を左右に振り、しなやかなそうな長い指を湯呑みに絡め、今日のために真が奮発していた日本茶を静々と飲んだ。
「あれだけ燦々と眩しい子に成長したのはきっと進藤さんの純粋な愛情のおかげでしょう」
真は何度もパチパチ瞬きした。
早くに家庭を持ち、私には早過ぎたと妻に別れを切り出され、それから親子二人で生きてきた。
「あ、ありがとうございます、俺、そんなこと言われたの……初めて……です」
真の双眸に瞬く間にぶわぁぁっと満ちた涙。
息子の担任前で恥ずかしいったらありゃあしないが、止められない、仕舞いにはぼろぼろ溢れて号泣状態になった。
「う~~~っ」
「大丈夫ですか、進藤さん」
俯いていた真が顔を上げればすぐ隣に御船が寄り添っていた。
「っ、すみませんっ、先生の前でこんなっ……ほんとすみません……」
「謝らないでください。構いませんから」
「っ……ずっと、こんな父親でいいのかなって、俺……ずっと不安で……」
メソメソしている真の頭を御船はそっと撫でた。
まるで愚図る幼いこどもをイイコイイコするような手つきで。
「貴方だからこそ。今の良太君が存在しているのだと思います。その不安も糧になったに違いありません」
かて、って、なーに?
それにしても、御船先生、イイにおい、最初はわからなかったけど近くに来たらわかる、ふんわり、優しいお花のにおいがする。
うん、今、かなり近い。
これって、俺さ、御船先生に抱きしめられてない?
美形先生に抱擁されていることに真はやっと気づいた。
小さなこどものように扱われていると、カァァァッと耳まで赤くして、途端に恥ずかしがった。
「すす、すみません、こんなみっともない真似、こんなんじゃあ良太よりこどもだ、俺」
「とても可愛らしいですよ」
御船は恥ずかしがって照れる真により微笑を深めた。
「あの、お茶、淹れ直してきます、ていうか、そろそろ次のお家に行かなきゃなんじゃ、」
「こちらで最後なので」
耳たぶまで優しくくすぐられて、どうしようと赤面困惑して縮こまる真に端整な唇は囁きかける。
「もう少し長居させて頂いても宜しいでしょうか、進藤さん……?」
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