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攻め彼相食む/タチ×タチ
■別シリーズのキャラと同名のキャラが登場しますが相互関係はありません
週末のとある居酒屋にて。
主に会社員で賑わう店内、その二人は生ジョッキ片手に食事をしていた。
テーブルには主に肉メインの一品料理、おしぼりは丁寧に畳まれている、スーツではなくジーンズにTシャツといったラフな格好、黒短髪、思わず縋りつきたくなる見栄えのいい後ろ姿。
「一年、すぐに捻挫しやがって話にならねぇ、あとバテやすい」
「……夏の強化試合、熱中症、気をつけないとな」
二十七歳、体育教師、バスケ部顧問。
高校時代から友人関係にある二人。
「どうしてんだろうな、あいつら」
店員をさっと呼び止め、二人分の生おかわりを注文して空いたジョッキを下げてもらった後、緒方 はふと呟いた。
「バスケ部連中。元気にしてんのか?」
「……俺は連絡とっていない」
串から直に砂肝を二つ口内にさらった阿南 、淡々と返事をした。
「俺もとってねぇ」
「……元気にしてるだろ」
かつて高校時代、共に学校生活を送っていた友達、部活仲間をなんとなく思い出した二人。
そう、それはすでに記憶の中に埋もれつつある、かつての、思い出。
「焼き鳥、食いてぇ」
「……次来たら頼むか」
「ハツと手羽餃子、それにしてもよく考えてみたら」
「……ん」
「俺、高校のダチでこんなに頻繁に会うの、お前くらいだわ」
緒方は次に店員が来たら片づけてもらう皿を重ねてテーブル脇に寄せ、畳に後ろ手に両手を突かせると、長い足を伸ばす。
向かい側に座る阿南の視界に緒方の裸足の足がにゅっとテーブル下から訪れた。
「俺の場合は……高校、大学、今の付き合いも含めて、お前くらいだ」
「あ?」
「こんな風に……飲む相手」
三杯目のジョッキがやってきた。
焼き鳥とふぐ白子を頼んで、店員が去ると、二人は同じタイミングで三杯目に口をつける。
男っぽい喉仏が雄々しく蠢いてストレス知らずの丈夫な胃に麦芽を運ぶ。
「最近、どんなだよ」
「……ん」
「いい相手。いねぇのかよ」
「いないな……」
「ふぅん」
「緒方は……」
「俺もいねぇ」
「そうか……」
三杯目のジョッキは最初の一口であっという間に残り僅かとなった……。
アルコールの余韻残る舌先同士が激しく絡み合う。
「っ……は……」
「……っ……ッ」
そこは週末のとあるラブホ。
部屋に入るなりスイッチが入った緒方と阿南。
照明も点けずに初めて交わす前戯にドア前で溺れた。
そう、十年近い付き合いにおいて二人でこんな真似に至るのは初めてのことだった。
人気があった二人は異性のみならず同性を相手にしたこともあった。
お互い、それを察していたが、敢えて口に出すようなことはせず、暗黙の了解としていた。
縺れるようにベッドに倒れこみ、体育教師二つ分の重みにベッドがギシリと悲鳴を。
噛み合うような肉食的キスが続き、緒方が上になったり、阿南が上になったり、また緒方が上になったり、阿南が……緒方が……。
「……おい」
「……何だ」
「まさか俺に挿入 れる気じゃねぇよな?」
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