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法医学教室の想い人-3
邑志摩は小窓から技能補佐員の葛西と理瀬教授がキスしているのを見ていた。
いや、正確に言うならば理瀬教授が棒立ちの葛西に抱きついて猛烈に口づけている姿を。
「教授」
何の秀でた能力もない、あんな凡庸な人間のどこがいいんですか、理瀬……さん。
「盗み見か?」
気配はわかっていた。
盗み見していた自分を真後ろから眺めていた、嫌な男。
数時間前の夜明け近くにベッドを共にした男。
邑志摩は肩越しに鮫島を睨んだ。
『あ……ッはぁッ、あ……ッ!』
安っぽい部屋で二時間休憩=猛セックスに至った。
しなやかに引き締まった邑志摩の体を奥まで犯して突き揺さぶって、さり気なく割れた腹筋が過敏に波打ち、濡れたペニスがひくひくのたうつのを満足げに見下ろしていた鮫島。
『いいね。やっぱり綺麗な体してる、志摩君』
初めての同衾。
どうして誘いに乗ったのか。
そもそも、これまで攻め手できたというのに。
わざわざ、受け身のポジションを許してまで。
飲み過ぎたのか。
それとも。
思い通りにならない恋路に自棄でも起こしたか。
『あッ』
鮫島が硬い熱に漲るペニスを後孔奥でぐるりと回し動かす。
収縮する肉襞を絡めてさらに奥へ捻じ込まれ、痛いくらい窮屈な締めつけを我が物顔で貪られた。
『初めて、か』
鮫島は捩れて汗ばむ腹筋をゆっくり撫で上げ、先走りで滑る邑志摩の先端を掌で包み込んだ。
包み込むなり始められたピストン。
射精を強請るようにアップテンポで強めにしごく。
安っぽい色のシーツ上で初めて抉じ開けられる律動に四肢を軋ませ、ペニスにちょくで注ぎ込まれる快楽に涙目となりながら。
邑志摩は鮫島を睨みつけた。
鮫島は気だるげな笑みを深くした。
『俺はね、邑志摩君みたいな可哀想なコが好きで堪らない』
「あんたこそ盗み見してんじゃねぇよ」
邑志摩は鮫島を見もせずにその場から去って行った。
邑志摩の様子で解剖室の光景が予想できた鮫島は、小さく笑い、特に興味は湧かずに。
白衣の裾を翻して邑志摩の後を追った。
「……あの、きょ、教授?」
わけがわからずにキスの間ずっと硬直していた葛西に、理瀬はくすっと笑い、言う……。
「バーーーーーーカ」
「えっっ」
「今度お前の臓器見せろ」
「えぇぇぇえっっ」
「ソトだけじゃあ物足りねぇからな、ナカも観察させろ」
「あの、これは……パワハラですか? 殺害予告? 対処法がわかりませぇん……」
白衣のポケットに両手を突っ込んだ理瀬は情けなーく突っ立っている葛西を「くそばか」と笑いながら理不尽に罵った。
まー、ほんとはいつもカワイイって思ってんだけど、さ。
end
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