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異世界わん!!-2

「っつってもどこ行くって話だよな」 フードを目深にかぶった燎一郎は街角の路地裏でしゃがみ込んでいた。 身長170センチ前後、茶金髪、両耳ピアス、平均体型。 この世界で目覚めた瞬間からカミュの屋敷にずっといた燎一郎は初めて外へやってきた。 割と栄えていそうな街を行くもの、皆が皆、犬頭。 屋敷にいた老執事のセバスチャンだって、メイドのリアナ・ケシャの双子だって、庭師のシンクレアだって犬頭だったが。 こうして改めて自分だけが人間だと思い知らされると淋しさが募る。 「チクショー、カミュの奴……」 真っ二つにされたスマホを思い出して燎一郎はグス、と鼻を鳴らし、慌てて涙を拭った。 さすがにヤンキーくんとは言え、前世界との唯一の繋がりを失ったことはショックが大きかった。 声を、言葉を届けてくれる皆がいる世界に戻れるのかはわからない、それでも心の拠り所だった。 なんでだよ、カミュ。 そんなにひでぇことかよ。 お前にだって家族や友達いんだろ、一生会えなくなったらどうだよ、淋しいだろ? 「クソバカが」 どうしても湧いてくる涙。 弱い自分が不甲斐なく、それでも不安で、同時にカミュへの怒りがおさまらずに燎一郎はまた乱暴に目元を拭った。 そこへ。 「なにしてんの、具合悪ぃの?」 「介抱してあげよーか」 どこの世界にもならず者な輩というものは存在するらしい……。 「俺ぁ男だって、あっち行けよ」 「え。ちょちょちょ、こいつニンゲンじゃね?」 フード下に覗いた燎一郎の顔にアラスカンマラミュートな獣人は顔を見合わせ、ニヤリ。 「レア中のレアじゃん。男でも問題ナシ?」 「もっと顔見せろよ、へぇ~、これがニンゲンか~、どーする、バーの奴等も呼んでくっか?」 「全員でお試し?」 「盛り上がるぜ」 普段の燎一郎ならばギャースカ啖呵を切るところだが、如何せん、今は傷心の身。 この世界で目覚めた瞬間よりも怯えと不安で動くことができない彼に野蛮な腕が伸びて……。 「「え!!??」」 輩な獣人が仰天し、彼らの驚きぶりに燎一郎もぎょっとした。 「コイツ、ファング家の御守りつけてやがるッ」 「うっそ、まさかカミュ少佐の婚約者ッ……あっぶねぇ~、こりゃまたとんだ失礼な真似を……ほらほら、未遂ですから? なーんにもなかったことに、ね? お願いしますよ、未来のカミュ少佐夫人?」 最初の様子と打って変わってヘコヘコしながら彼等は路地裏から去って行った。 残された燎一郎は……これでもかというくらいに目を見開かせていた。 「あいつら……今、なんて……?」 お守り? 婚約者? すでに自分の首にすっかり馴染んだ首輪に触れ、燎一郎は、一人真っ赤になった……。

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