12 / 195
異世界わん!!/獣人×ヤンキー男子
トラックに轢かれかけた小さな命を助けようとした八代燎一郎 。
気がつけばソコはすでに異世界だった……!!
「お前はニンゲンか?」
しかも目の前にいたのは……獣人だった。
燎一郎のいた世界では犬と呼ばれていた、さらに細かく言うならばジャーマンシェパードという犬種の頭をした獣人だった。
いつの間につけられたのか、燎一郎自身の首にはやたら頑丈そうな紋章つきの首輪がはめられていた。
引き締まった長身体躯で黒軍服を勇ましく着こなし、左目に眼帯をつけた獣人は制服姿で呆気にとられていた燎一郎に言うのだ。
「お前は今日から私に仕えろ」
カミュ・V・ファング、古くからこのグロウル国に仕えてきた牙の名に恥じぬ誉れ高き血筋の一族。
現在ファング家の当主、軍部において少佐の位につくカミュの言葉に燎一郎は言うのだ。
「ふざけんじゃねぇッ今すぐこの首輪外しやがれッつぅかここどこだよッああッッ!?」
燎一郎はヤンキーくんだった。
いきなり半端ない気迫の持ち主である獣人とご対面し、急すぎる異世界トリップに怯えて縮こまるようなタマじゃあなかった。
「ガチでふざけんなふざけんなふざけんなッ!!!!」
まぁ最初はそんな調子であったが。
かくかくしかじか、様々な出来事を経て強く美しいカミュに惹かれていった燎一郎なわけで。
絶対に外してもらえない首輪だけがネックであったが、他は特に不満のない生活、任されたお屋敷の家事全般をブツクサ言いつつも持ち前の世話焼きド根性できちんとこなしていって。
不思議なことに。
制服ズボンのポケットに入っていたスマホは前世界との交信が可能であった。
しかもいくらメールや電話でやり取りしようと一向に減ることもなくキープされている充電。
前世界との唯一の繋がりであるスマホで友達や家族に連絡をとっていた燎一郎。
カミュには隠していた。
それがマズかった。
「燎一郎、何をしている」
ある日、気づかれてしまって。
奪われるなり、なんと、二つ折りのガラケーでもない頑丈なスマホを目の前でバキリと真っ二つにへし折られた。
「私を偽るな」
燎一郎は全身の毛を逆立てた野良猫さながら涙ながらにカミュを睨んだ。
出会ったときよりも抑えられない怒り……というより悲しみでいっぱいになった。
そして燎一郎は「偽るな」と命じたカミュに逆らって。
真夜中、こっそり屋敷を抜け出した。
もう戻らないつもりで………………。
ともだちにシェアしよう!