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幽霊なのに感じちゃう!?俺の未練は童貞卒業!触手による処女喪失じゃねぇ!!/触手×不良幽霊←産休助手
公平は幽霊だ。
居眠り運転のトラックに撥ねられ、高校二年生という若さで死亡、あまりにも無情な現実を受け入れられずに生まれ育った町をひとりぼっちで彷徨っていた。
自分を跳ねた奴も当然憎かったし、他校の不良グループとの争いにもちゃんと決着をつけたかったし、まだまだおいしいものを食べたかったし、田舎のじいちゃんばあちゃんのところへもっと遊びにいきたかった。
中でも公平が一番未練に思っていることは。
「童貞のまま死ぬなんてありえねぇ、死ぬに死ねねぇ、あんまりにもあんまり過ぎンだろ」
童貞卒業に至らず人生を終えるなんて無理過ぎ、とにもかくにも童貞卒業への未練が大きく、公平を地上に繋ぎ止める一番の枷になっていた。
そんな公平、冬場の下校中に亡くなったものだから四六時中学ランを着用していた。
現在、真夏の盛りだが幽霊なので寒さ暑さを感じない、全国的にトンデモナイ酷暑に見舞われているようだが全くもって関係のない話だった。
「これから成績表を配ります」
本日は一学期の終業式。
校庭から聞こえてくる蝉の大合唱、いつの間にやら教室には冷暖房がとりつけられて閉め切られた窓、成績表を受け取った生徒らのリアクションは人それぞれ違うが、やはり夏休みの始まりに皆が心浮かれているようで。
教室後方に配された持ち物置き場のロッカーにお行儀悪く座った公平は見飽きた光景をぼんやり眺めていた。
公平のかつてのクラスメートなど、もう、学校のどこにもいない。
自分が死んで何年経過したのかイチイチ数えていないが、かなりの年数が過ぎ去ったのだろう、教師だって半数が定年を迎えて去って行った。
たった一人置き去りにされている公平、おせんちになるどころか。
「あー、やっぱ夏はいいよな、薄手の制服に透けるブラ紐、男のロマンだよな」
はしゃぐ女子らに釘づけだ。
誰にも見えない幽霊なのだから、女子更衣室で生着替えなんぞ見放題なわけだが、生前は硬派な不良クンだった公平、そんなことはしない、硬派というか初心な童貞クンだから心臓が持たない……まぁすでに死んではいるのだが。
やがて運動部員も含めた全校生徒が帰宅し、一学期最後の教職員会議も終了し、先生達も次から次に校舎を後にしていく中で。
「公平君」
夕暮れ、鮮血の色じみた西日が小窓から差し込む階段の踊り場。
生前、よくタバコをふかしていた場所で何をするでもなくぼんやりしていた公平は久方ぶりに名前を呼ばれて驚愕した。
「どうもこんばんは」
階段に座り込んだ公平を見下ろしていたのは一人の産休助手だった。
一学期の途中でやってきた臨時の代替職員。
実験室にこもりきりで、校内の他の場所では滅多に姿を見かけることがない、実験室の怪人と呼ばれている彼。
「あんた……俺が見えんのか?」
呆気にとられている公平の問いかけに、にこやかに頷いてみせる。
日が暮れても暑さが和らぐことのない盛夏の候、白衣のポケットに両手を突っ込み、ただでさえ細い糸目を一段とイタズラ狐っぽく吊り上げてみせる。
学ランは全開、シャツの第一ボタンを外して、見るからに不良っぽい生意気そうな顔立ちの幽霊に理科実験助手の鈴木は笑いかけた。
「おいで、公平君」
僕とお話、しよう?
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