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悪い夢だと思いたい
2学期。
静流は生徒会役員選挙に立候補、1年生でただ一人当選。
会長は1年を通しての任期のため、当然保科洋介。
夢にまで見た、お近付き、である。
「1年役員の速水静流です。よろしくお願いします」
第1回会議の席で、かなり緊張しながらも落ち着いて、静流は自己紹介した。
「1年生で当選とは、よほどのやり手なんだろうね。僕も食われないように頑張らないと」
「そ、そんな…」
信じられない。会話している、あの憧れの先輩と。
やはり思った通り、保科は話してみればみるほど紳士だった。仕事は迅速かつ確実、常に冷静な判断を下す。そのくせ、時に誰もが考えもつかないような斬新な案を引っ張り出して来たりする。静流はますます保科に魅かれていった。
そのため、当然紫苑との付き合いも悪くなる。
紫苑の呼びかけにさえ、「今から会議だから」と無碍にされる。
紫苑は、当然面白くない。
「――ということで、今日の会議は終了します」
保品の締めの一声。
「今期は特に1年の速水君が良く頑張ってくれるからはかどるよ」
保科に誉められ、静流は嬉しくて幸せいっぱいだ。
「さ、みんな。解散してくれて結構だ。書記と会計は残って最後の詰め
を…」
「僕も手伝います」
奥ゆかしく控えめな静流らしからぬ発言だった。
「速水君。気持ちは嬉しいけど…」
保科が苦笑いする。書記と会計の態度はもっとあからさまだった。
「アンタに手伝えることはないって事」
「ちょっと誉められたからって、あんま調子のんなよ」
自己嫌悪の嵐に飲まれて静流は寮に戻った。自分が恥ずかしかった。
部屋に入ると…
「よぉ」
紫苑がいた。しかしこんな心境で、静流は誰とも話したくないし、何もしたくなかった。
「どうしたの…悪いけど僕もう寝るよ…せっかく来てくれたけど疲れてるから…」
うつろな目でとぼとぼ歩く静流の腕を、紫苑がきつく引いた。
「な、何すん…」
そのまま押し倒され、組み敷かれた格好になった静流は、わけがわからなかった。
その後、紫苑がとんでもないことを言ったので、思惑は分かった。
「おれのもんになれ」
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