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第10話
「もう、マジで、片岡の『反省レポート』は勘弁だかんなぁ~…っ」
今春から遅刻魔の明とグループになってから、既に2回、地獄の『反省レポート』を余儀なくされた後藤が悲痛な声をあげて、テーブルの上に突っ伏した。
その姿を見て、申し訳ないと朔は思いつつ、正直、朔に明を言い聞かせられる力はない。出来る限り声はかけるが、今後も後藤の苦労は続くんだろうなと達観した気持ちで、朔はカツカレーを口に入れた。
何を言っても響かない双子に溜め息をつきつつ、ある程度文句を言ったおかげか、後藤の怒りも徐々に萎んでいった。
「…てか…相変わらず食うねぇ、朔。『食われる方』っつったって、食い過ぎじゃね?」
朔の前にある大量の食べ物を見て、後藤が呟く。
カツカレー大盛り、油そば、クリームパン2個にチョココロネ、野菜ジュース、カフェオレ、特大プリンが所狭しと朔の前に置かれている。反面、朔の隣に座る明と正面に座る後藤の前には飲み物しか置かれていなかった。後藤もまた、明と同じ、吸血を主食にする吸血鬼だ。人間が食べる物も食べられるが、栄養として満たされやすいのが血液のため、普段はあまり人間食を食べない。
「食い過ぎじゃあねぇ。こんくらい食わねぇと持たねぇんだよ」
話しかけられた朔ではなく、明が眉間にシワを寄せて答えた。血を提供する朔は、抜かれる分、食事をしないといけない。そのため、細身の肉体で大量の食事を要した。
「じゃあ、明が朔を食い過ぎなんだよ。朔だけじゃなくて、他の奴食ったり、人間食も食えば?」
何気なく言った後藤の言葉に、明はあからさまに嫌悪感を示した。眉間のシワを深めて、低い声で拒否の言葉を放つ。
「…いらねぇ」
「あっそ。まぁ、確かに他を探す手間考えたら、朔だけ食っときゃ楽だしな。あーあ、双子いいなぁ。オレも双子が良かったなぁ~」
端整な顔立ちの明の睨みは凄みがあるものの、幼い時から一緒にいる後藤は、全く意に返さず、幼児のように唇を尖らせてぶつぶつと再び机に突っ伏した。黙っていればキリッとしたスポーツマンタイプの精悍な顔立ちも、今はまるで子犬のように見える。
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