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第11話

「なんだよ、最近、餌見つけたって言ってたろ?」 「ああ、他大のなぁ。それがさ、いざ血ィ吸ったら、まっずいの何のって!…処女とか言ってたけど、嘘だったみたいでさ。即効、催眠解いて、さよならしたわ。この年齢になると交わってない奴探すのが難しいんだよなぁ。俺達世代は、じぃちゃん達みたいに鼻効かねぇし」  ガバッと勢い良く体を起こし、鼻息荒く、後藤は愚痴を言う。  相変わらず自分達とは違い、コロコロ表情が変わるなぁ、と朔は食べ終えたカツカレー用のスプーンを置き、クリームパンの袋を開けた。  後藤は双子ではないので、自力で餌を見つけないといけず、毎日毎日、そのことに躍起になっていた。  ふと、気になることがあり、明と後藤のーーーと言うより、ほぼ後藤の独断場だがーー会話に朔もようやく入った。 「ねぇ、『まずい』ってどんな味になるの?」 「あ?血?あー…なんつーか、別々の全く違う味が混ざり合ってなくて、それだけでもうまくねぇのに、さらにそれが腐ってる…みたいな?」 「「…へぇ」」 朔と明の言葉が、一矢乱れず重なった。 分かるようで分からない。 特に、食事としての血の味が全く分からない朔には、イメージが湧かなかった。 「キョーミないなら聞かないでくだっさーい。たく…。あ、そうだ、お前ら授業の前半いなかったから知らないと思うけど、片岡、4月からサバティカルでいないらしいよ」 「ふぅん?」 「で、今年度、片岡ゼミのやつは、来年度新しく来る奴の基礎ゼミを取れってさ。これで、反省レポートの危機は脱せられたぜ~♪」 「よかったな」 「おまっ!他人事みてぇに!原因お前だからな!?」 再び、始まった後藤から明への説教を尻目に、朔はもぐもぐと大量のランチを食していった。

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