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第12話
抽選から外れ、明とも後藤とも分かれた基礎入門の授業を終え、朔は中庭のベンチで二人が来るのを待っていた。立春が過ぎて、少し日が伸びたとはいえ、5限後の時間帯はまだ暗く、空気が冷たい。
すぐに来ると思っていたもののなかなか来ない二人に、やっぱり建物の中で待とうと朔は立ち上がり歩き出そうとしたところで、ドンッと横から来た人とぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
「いえ、こちらこそ…」
慌てて謝罪をして顔を上げた瞬間、ふわりと独特な匂いがした。
あっ、とお互いに気付き、目を合わせる。
「…君、ヴァンパイア?」
「はい」
問いかけてきた男は、朔より年上のようでスーツを来ており、職員側のようだった。
「へぇ、また会った。さっきも何人かいたけど、ここの大学は多いね」
「…そうですか?」
「ああ。何校か知ってるけど、日本の中だと多い方じゃないかな?」
ノンフレームの眼鏡の下でタレ目を更に垂らして、人好きのする微笑を浮かべながら男は気さくに言葉を紡ぐ。あまり人付き合いの得意じゃない朔は、その後の言葉がすぐに出てこない。朔の困惑を感じたのか、「あ、ごめんね」と軽く会釈しながら男が謝った。
「同類に会うと嬉しくなっちゃって、話込んじゃうんだよね。それに君、食われる方でしょ?血の匂いが濃くないからね。僕もそっちなんだ」
謝罪しつつも男の話は終わらない。どうしようかと首の後ろを軽く掻いていると、「朔っ」と後ろの方から名前を呼ばれた。振り返ると明と後藤が、授業のあった建物から出てきていた。
「あぁ、あれが双子なんだ?…話せて良かったよ。それじゃ、また会ったら気軽に声かけて?」
朔とそっくりな明を見て、男は一人で納得すると軽く手を振りながらその場を後にしていった。
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