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第2話

 緩やかにうねる長髪を纏め乍ら脱がされるのを待っている葵にふと意地悪をしたくなった日向は、自分のシャツをおもむろに脱いだ。艶やかな肌には2日前に眼下の葵に付けられた爪痕がまだ薄く残っている。 「ああ、残っている。日向の皮膚は薄いから、悪かったね。あんまり激しくされてどうにも我慢ができなくてね。」  そう言いながら葵の指先が今度は一つ一つその痕を愛おしむように辿ってゆく。細く繊細な指の感触に先日の葵の乱れた様子を思い出した日向は、若い衝動に駆られた。  素肌に直接羽織った絹のシャツを透かして、葵の薄桃色の頂きが見える。日向は腕を伸ばしてガラスの器を取ると、乱暴に生クリームを掬ってシャツの上から2か所に垂らし、それぞれを中指で一刷けずつ塗り広げた。 「っ、あ……。」  布越しに敏感な箇所に触れたクリームの冷たさと、もどかしい程一瞬で終わった日向の指先が生み出す痺れに、葵が甘い声を漏らす。  シャツを汚しても葵が怒らない事は知っている。いつだってそうだ、先日大事な会議があると言っていた日の前夜、激しく攻めたてて散々首筋に朱痕を付けた時だって平気な顔をしていたのだ。  そんな葵にいつも負けている気がするのが悔しくて日向は焦らし続ける。白いシャツ越しにもはっきりと見える濃い緋色に変化し、すっかり硬く立ち上がったそこを、執拗に、しかしあくまでやんわりと愛撫した。葵の口の端から洩れる声にならない吐息に熱が高まってゆく。  遂にのけ反った葵の首筋に歯を立てながら、自分のズボンを下着ごと下ろし、葵の服を全て剥ぎ取ると、今にも弾けそうな互いの欲が腰や腹に当たって跳ねた。思わず肌を擦り合わせて腰を動かしかけた日向の滑らかな双丘を葵がぐっと掴んで押しとどめた。 「……だめっ! 日向、日向ぁ……。」  甘い抑止の言葉はむしろ日向を煽るためのものだ。絡みつく葵の身体をひっくり返してうつ伏せにし、まだ器に残っていたクリームを何度も指で掻き出して葵に塗りつけた。 「葵……好きだよ。葵。」  後ろから抱きつきながら、乱れた髪の間にのぞく(そびら)の味を確かめてゆく。日向は、ただ快楽の(しとね)へと沈みこんでゆく幻惑に溺れていった。 La crème fouettée (2018) 文 蜜鳥 表紙絵 水城るり

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