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第11話

 その時、前から稲葉先輩が歩いてきた。なんだかすっかり隆也のせいで名前覚えちゃったな。いつも寝た男の名前なんて覚えてもいないのに。  「あ、高梨君。どうしたのこんな時間に。」  「別に。散歩してるだけです。」  行くあてもなかった千紘は適当な言い訳をした。  「そうだ、今日、朝、一緒にいた奴なんだけど。あいつも高梨君に興味あるみたいでさ。 アドレス教えていいかな?」  「いいですよ。」  千紘はそう言ってとことこと自販機のほうへと歩き出した。  「待ってよ。せっかちだなあ。あんなにかわいかったのに。まあ、いいや。また、よろしくね。」  そう言って、稲葉先輩は千紘とは反対の方向へと歩きだした。 そうこうしているうちに暗くなってきたので部屋へと戻ることにした。

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