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楽しい時間

僕はヒロの家をたびたび訪れて、毎回お茶とお菓子をご馳走になりながら、たくさんの話をした。 「ねぇユキ、きみは将来何になりたいの?」 「うーん……なんだろう。勉強して、高校へ行って……そこから先は、わからないけれど」 「あれ?前は本に出てくるような冒険家になりたいって言っていたじゃないか」 「学校でそれを言ったらね……笑われたんだ」 『あはは、冒険なんて正気の人間のすることじゃない』 『君はこの年になってそんなことを言って恥ずかしくないのかい?』 『鈴城伯爵の次男坊は随分と夢見がちだなぁ』 自然と顔が下がる。すると、ぽん、と温かいものが頭に乗った。 目だけを上げると、優しい顔でヒロが僕の頭を撫でていた。 「きみの夢は馬鹿らしいものじゃあ、ないよ」 「……そうかなあ」 「そうだよ。本に出てくる冒険家って誰よりも勇敢だろう?あれになりたいと言えるだけでも、きみは夢は素晴らしいものだってわかるさ。弱虫な奴らの話なんて聞かなくていいのさ!」 「……そうかなぁ?」 「うん。だから自信を持とうよ!」 ヒロがまっすぐの銀髪を揺らしながらキラキラと笑う。僕はヒロの膝にぽすんと頭を乗せた。細い指先が髪を掻き分けてくれる。 「……ヒロは、何になりたいの?」 「ボクはねぇ、飛行士になりたいんだ!」 「飛行士?なんで?」 「この青空を飛べたら、どんなに気持ちがいいだろうって思うのだよ。本当は鳥になりたいのだけれどね、人間は鳥にはなれないでしょう?」 「あはは、当たり前じゃないか」 「あ、こら、笑ったなぁ!」 「あはははは」 ヒロと過ごす時間は短いけれども、とても楽しい。

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