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新しい友達
「……ところで、きみ、お屋敷の子だろう?一体全体、なぜここまで来たんだい?」
「えっと……ずっと前から誰が住んでいるのかが、気になってて。今日、予定が潰れて暇になったから、それで」
「……本当に、それだけ?」
不意に強い口調で問いかけられ、僕はおどおどしながらも頷いた。彼はじっと僕を見つめていたけれども、やがて目元を和らげた。
「……ま、そうだよね。知っていたら、ボクを綺麗だなどと言うはずがないか……」
「今、何と言ったの?」
「いや、何でもないよ。それよりきみ、名前は何というの?」
「鈴城幸弘(すずしろ ゆきひろ)だよ。君は?」
「広遠(ひろみち)だよ」
「名字は?」
「ひみつ」
「えぇ〜、僕は教えたっていうのに、ずるいんじゃないかい!」
僕が唇をとがらせると、彼は銀髪を揺らして笑いながら「ボクたち、〝ひろ〟が同じだね」と言った。クスッと笑うその様子が、やっぱり女の子みたいに可愛くて、僕は顔を赤くして黙りこんだ。
「ねぇ、きみのこと、ユキって呼んでもいいかい?」
「い、いいよ。僕は君のこと、何て呼べば良いの?」
「ヒロって呼んでおくれよ。マミーがそう呼ぶのさ」
それから僕たちは、僕がマフィンを食べ終わるまで、色々な話をした。
好きな本や、食べ物の話。お互いの母親がどんな人なのか。
ヒロのお母様は思っていた通り、外国人らしい。きっとヒロに似て、物凄い美人なんだろうなとぼんやり想像した。あ、ヒロが似ているのか。
「また来るよ」
「約束だよ、またお話をさせておくれよ」
「うん、今度は、君の好きそうな本を持ってくるね」
「!ありがとう!」
一階ではヒロの母様が寝ているそうなので、窓から出て木から伝い下りると、ヒロがこちらを見ていた。手を振ると、手を振り返してくれた。
その日、僕は幸せな気持ちで眠りに就いた。新しく出来た友達の存在が、嬉しくて仕方なかった。
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