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天使の正体

「あはっ、あは、あははははっ!ぼ、ボクのこと、女の子だと思ってたの?しゅっ、しゅ、淑女って!」 大笑いしている隣の彼女ーーいや、えっと『ボク』?『女の子だと思ってた』? えっと、あれ。 も、もしかして、 「おとこぉ⁉︎」 僕が素っ頓狂な声を出すと、笑い声はさらに大きくなった。 「はーっ、笑ったなぁ!きみ、本当にボクのこと、女の子だと思っていたのだね」 いまだ笑いの混じった声で言われて、僕は膨れながら答えた。 「仕様がないだろう、そんな長い髪をしているのだから」 そんな会話をする僕たちの前には、湯気を上げる紅茶とマフィンが置いてある。彼女ーーではなく、彼が、笑いながらも用意してくれたものだ。 「この髪はマミーが気に入ってるから切らないだけ。……きみ、昼間ボクから逃げたのも、女の子だと思ったからなの?初心だねぇ!」 「ち、違う!その……、も……すご、く……い、だったから……」 「え?何て言ったの?」 「君が、物凄く、き、綺麗だった、から……」 そう口に出してから、なんてことを言ったんだと、とてもとても恥ずかしくなった。頬がかっと熱くなって俯く。 「ッ!そ、そう」 でも、上ずった彼の声が聞こえたとき、僕は思わず眼だけ動かして彼の顔を窺った。 彼の白い顔は、朱に染まっていて。 「ふ、ふはっ」 「な、何、笑ってるのさっ」 「あ、あはははっ」 「だから、いったい何を笑ってるの⁉︎」 綺麗だと言われたくらいで顔を赤らめた彼に、親しみを覚えた。

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