6 / 8
天使の正体
「あはっ、あは、あははははっ!ぼ、ボクのこと、女の子だと思ってたの?しゅっ、しゅ、淑女って!」
大笑いしている隣の彼女ーーいや、えっと『ボク』?『女の子だと思ってた』?
えっと、あれ。
も、もしかして、
「おとこぉ⁉︎」
僕が素っ頓狂な声を出すと、笑い声はさらに大きくなった。
「はーっ、笑ったなぁ!きみ、本当にボクのこと、女の子だと思っていたのだね」
いまだ笑いの混じった声で言われて、僕は膨れながら答えた。
「仕様がないだろう、そんな長い髪をしているのだから」
そんな会話をする僕たちの前には、湯気を上げる紅茶とマフィンが置いてある。彼女ーーではなく、彼が、笑いながらも用意してくれたものだ。
「この髪はマミーが気に入ってるから切らないだけ。……きみ、昼間ボクから逃げたのも、女の子だと思ったからなの?初心だねぇ!」
「ち、違う!その……、も……すご、く……い、だったから……」
「え?何て言ったの?」
「君が、物凄く、き、綺麗だった、から……」
そう口に出してから、なんてことを言ったんだと、とてもとても恥ずかしくなった。頬がかっと熱くなって俯く。
「ッ!そ、そう」
でも、上ずった彼の声が聞こえたとき、僕は思わず眼だけ動かして彼の顔を窺った。
彼の白い顔は、朱に染まっていて。
「ふ、ふはっ」
「な、何、笑ってるのさっ」
「あ、あはははっ」
「だから、いったい何を笑ってるの⁉︎」
綺麗だと言われたくらいで顔を赤らめた彼に、親しみを覚えた。
ともだちにシェアしよう!