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第7話
「起きろ」
ぺちんと頬を叩かれて、目が開いた。視界が色を取り戻していく。
「・・・・・・・寝てた・・・・」
「見れば分かるっすよ」
ジュンタは頬を膨らまして、「ご飯出来たよ」と言って先にキッチンに向かった。だるい身体を起こして、部屋の壁に掛けられた時計を見る。40分程度寝ていたようだ。そうしてから俺もキッチンに向かった。リビングのすぐ横にキッチンがある。朝食と夕飯は大抵リビングで食べている。
1階に下りて、ドアは常に開けっ放しのリビングに入る。
「何作ったの?」
「焼きうどん」
ジュンタはフライパンから大皿へ、少し茶色を帯びた幾重もの紐状を移していた。芳ばしい香りが鼻に届く。
「・・・・・・そう」
俺はいつもの席に座り、その向かい側にジュンタが座る。小皿と割り箸が用意されていた。うどんは普通の箸だと滑って挟みにくいことをよく理解している。
いただきます、とジュンタが手を合わせてそう呟いて、焼きうどんに箸を伸ばした。
「結婚するのか」
手際の良さに、俺はついそんな質問を投げかけた。自分でも唐突だな、と思った。ジュンタがは?と眉を顰めて訊き返した。
「結婚、やっぱりするのか」
そんなことを訊いて、俺は何のつもりだったのだろう。ずっとこうして2人で暮らしていられる筈が無い。それは分かっているけれど、ジュンタの答えが聞きたかった。それは質問というより確認に等しかった。
「・・・・・・・いつの話?」
困ったようにジュンタは笑った。
「いや・・・・・・いつか・・・・」
ジュンタは小皿に焼きうどんの束をとって、口に運んだ。そしてそれを飲み込んでから、口を開く。
「どうだろ。って言ってもオレ達まだ高校生っすよ。結婚の話とか考えるのは早くないかい」
俺が「確かに」と言ってからこの話題は終わった。俺もいただきます、と言ってから焼きうどんに手を伸ばした。
冷凍うどんを解凍したのと、ネギ、豚肉。それを出汁で味付けしただけ。けれど美味しい。
「ジュンタ」
「何?」
「卵は?」
「え」
生卵を買いに行くと行っていたジュンタ。卵料理なんて今日はない。
「買い置きなかったからさ、忘れないうちに買っていこうと思って・・・・」
ジュンタは苦笑した。
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