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第185話

「みーちゃった。女の子と抱き合うなんて、茜に見られてたら終わってたね」 「げっ、居たのかよ。 丁度いい、これ運ぶの手伝って」 「えー、俺サボりに来たんだけど」 「サボんな。早く手伝う」 空きっぱなしだったドアの横から顔を覗かせ、フフフと悪い顔をしている真紘に、秋月も思わず顔を歪ませる。まさか茜に、誤解を生むような部分だけを抜粋して話さないといいけれど。 真紘に限ってそんな事はしないと思うが、一応。 「これ、茜くんには秘密にしといてよ?」 「分かってるって。でもちゃんと断ってるんだからいいじゃん?それに比べて……」 途中で口を噤んでしまい、機嫌の悪そうな真紘に思わず笑みが零れる。 真紘と雪斗がギクシャクしている原因が分かり、スッキリした。 「何笑ってんすか」 「いや?真紘くんも、案外子どもだなって。でも、それだけユッキーのことが大事なんだ。良かった良かった」 全てが分かった秋月に、バツの悪そうな顔をする真紘に、やっぱり子どもだなぁと思う。また本人に言ったら嫌がるんだろうけど。 「良くねぇし。 はぁ、いっそ名前でも書いたら、俺のモノになってくれるかなぁ」 「分かる。 かと言ってキスマークいっぱい付けたらエッチ禁止にされちゃうから気を付けなよ」 「マジか。気を付けよ」 相手をリードする側の二人は、案外話が合って前より距離が縮まった気がした。 雪斗が「別れるかも」なんて言って焦ったが、真紘は別れる様子もなく、それ以上に雪斗の事が大切で、自分のモノにしたいと言うくらいだ。 後でユッキーにちゃんと話し合えと言っておかないとな。 「もう!真紘遅い!……あれ、先生も一緒だったの?」 真紘の姿を確認した茜がプリプリ怒りながら近づいて来たが、秋月も一緒だと分かり意外な組み合わせに頭にハテナマークを浮かべていた。 そんな姿も可愛くて、いっぱいいっぱい抱き締めて、キスしたい。 それを悟った真紘が「変態教師」と呟いたのは聞こえないフリをしておいた。

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