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第44話
「どうしたの?」
『あ、茜?お母さん、今日も夜勤で帰れそうにないの! 代わりに預かってた荷物渡しといてくれる?』
心配していたが、元気な声が聞こえてすこしホッとした。
荷物とは何のことだろう。何も聞いていないから分からない。
その相手は一体誰なのか聞こうとすると、母から早口で伝えられた。
『陽向くんもうすぐ着くと思うからお願いね、じゃあね!』
「まっ、……切られた……」
それよりもマズいぞ。今、確かに「陽向」と言ったよな……?
かなり面倒くさい事になる、逃げねば。
「先生、俺は逃げるから」
「はぁ?逃げる?なんで??」
急いで部屋を出て玄関に向かう。先生は「何言ってんだこいつ」と言いたげだったけれど、そんなの構っていられない。
陽向に会うよりマシだった。
玄関のドアを開けようとすると、先にガチャッと誰かに開けられた。
しまった、遅かったか……。
「ただいま、あーちゃん♡」
「おかえり……ひーくん」
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