44 / 222

第44話

「どうしたの?」 『あ、茜?お母さん、今日も夜勤で帰れそうにないの! 代わりに預かってた荷物渡しといてくれる?』 心配していたが、元気な声が聞こえてすこしホッとした。 荷物とは何のことだろう。何も聞いていないから分からない。 その相手は一体誰なのか聞こうとすると、母から早口で伝えられた。 『陽向くんもうすぐ着くと思うからお願いね、じゃあね!』 「まっ、……切られた……」 それよりもマズいぞ。今、確かに「陽向」と言ったよな……? かなり面倒くさい事になる、逃げねば。 「先生、俺は逃げるから」 「はぁ?逃げる?なんで??」 急いで部屋を出て玄関に向かう。先生は「何言ってんだこいつ」と言いたげだったけれど、そんなの構っていられない。 陽向に会うよりマシだった。 玄関のドアを開けようとすると、先にガチャッと誰かに開けられた。 しまった、遅かったか……。 「ただいま、あーちゃん♡」 「おかえり……ひーくん」

ともだちにシェアしよう!