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《オメガバースな世界》③

 男らに触られて気持ち悪いのに、どうにかして欲しいと感じる浅ましいΩの身体。 「さわ……るな……」 「こいつ、めちゃくちゃレベル高ぇよな。孕ませてぇ」 「Ωでも、なかなか見ねぇほどの上物だな。言っておくけど、孕ませんのはオレだ」 「見つけたのはオレだぞ」 「オレが先に匂いに気づいたんだよ」  男らは言い合いながらも、佑月の身体をまさぐっていく。 (気持ち悪い……誰か……誰か、助けてくれ)  その時、佑月は発情の熱に浮かされながらも、別の存在を強く感じた。まだ少し距離があるが、細胞一つ一つが、未だ見ぬ〝彼〟を強く求めているような感覚がしたのだ。 (なんだ……?)  そんな佑月の思考を邪魔するように、一人の男が佑月のシャツを破った。露わになった二つの桃色の突起。目の色を変えた男どもが、代わる代わるに佑月の乳首に吸い付いてくる。 「あ……ぁ……イヤだぁぁ!!」 「こんなに乳首おっ立てて、フェロモン撒き散らしておきながら、イヤもクソもねぇだろ」  男らの下卑た笑い声が響く。こんな奴らに触れられるのは我慢ならない。だが、誰も助けてくれる者はいない。ヒートにならないよう、管理を怠ったΩが悪いのだと、見て見ぬふりをされる。  この発情にしたって、本当はまだ三週間も先だった。過去に発情期がズレた事がなかっただけに、佑月は今日という日を呪いたくなった。 「退け」  唸るような低い声が通る。  たった一言なのに、周囲を凍てつかせる。  佑月を囲っていた男らは、電池が切れたかのように、突然動きを止めた。そして命令通りに、佑月からサッと離れる。不思議なのは、男たちの顔は恐怖に引き攣っているように固まり、みな全身を震わせていることだ。 (いったい……なにが)  佑月は荒い呼吸を吐きながら、はだけたシャツをかき合わせ、距離を取っていく。そうは言っても、もう立っているのが辛い状態でもあった。特に第三者らしき者が現れてから、佑月の身体は更に熱くなっていた。  そしてふと男と目が合った瞬間。 「……ぁっ!」  佑月は強烈な身体の疼きに襲われた。まるで魂が揺さぶられるような衝撃。  相手の男も、驚いたような表情を浮かべている。高級スーツを身にまとった男は、オーラもルックスも全てが上等過ぎた。誰が見てもαだと、一目瞭然の男であった。    

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