1 / 8

第1話

戦国の世、各地で領土争いの戦が巻き起こる不安定なこの時代。 齢十二になったばかりの幼さ残る、たけ丸と一之介は、二人で必死に生き抜いていた。 少し前に暮らしていた村は焼かれ、両親とはぐれ気づいた時には、たけ丸と一之介、二人だけになっていた。 二人は幼馴染で、同い年。よく一緒に遊んでいた。 たけ丸は、村では一番の長者の家の息子で頭がとても良かった。歳の割には小柄で色白、髪は肩まで伸びていて、女の子のように見えなくもない可愛い少年だ。 一之介は村で一番の腕白者。活発な少年で手足が長く背丈も歳の割には高い方で、髪は短く刈り上げている。職人で狩人の父親のもと野山を駆け回り身体能力に長けていた。 いつも活発な一之介に、たけ丸はついて回ってとても頼っていた。 その日も二人は、村から少し外れた森で遊んでいたところ、突然、村が何者かの軍勢に襲われたのだ。 火の手が上がり、怒号飛び交う戦乱から二人は手を握り、ひたすら走って逃げてきた。 焼け野原になった里村から、逃げ出してどれくらい経ったか、山を登り川を下り、彷徨いながらも人がいる村を目指してひたすら歩いていた。 「大丈夫か?たけ丸」 声をかけるのは一之介。たけ丸より頭一つ背丈が高い。 「うん…」 「腹減ったか?」 「…うん」 「よし!なら少し休もう!」 途中で取っていた木の実をひとつたけ丸に渡す。 「ありがとう」 たけ丸は、小柄で体力もない、数日、木の実などで飢えをしのいできたが、それも限界にきているようで… 両親とはぐれたのも精神的に落ち込んでいて… 一之介はなんとか、たけ丸を元気付けようと声をかける。 「大丈夫だから、きっとたけ丸の母ちゃんも父ちゃんもどっかで生きてるから!おれたちも生き抜いて父ちゃん達をさがさなきゃな!」 「うん…」 「あ、川があるな、水汲んでくるから待ってな、」 「ぼくもいく」 「あぁ」 たけ丸の手を取り、一緒に川べりまでくる。 二人は早速水を飲み喉の渇きを潤す。 「水うめー!」 「おいしい」 冷たい水が心地よくて、自然と言葉が溢れる。 「よし!魚取ろうか!」 「どうやって?」 「銛を作るから、待ってろよ」 「この石がいいな、これと木の棒をつるで縛る、出来た!ほら。あとは、おれのも作るから」 出来たモリを、たけ丸に手渡しながら作業に取り掛かる。 「ありがとう、凄いね、一之介は」 「父ちゃんが色々教えてくれてたからな」 「でも凄い」 「へへ、じゃ、これで魚取って、焼いて食おうぜ!」 「うん」 そうして魚を追い、下流へと下って行っていると… 「あ、あれ…橋」 たけ丸が橋を見つけた。 「本当だ、人里が近いのかも…とりあえず今日は日が暮れてきたから橋の下を寝床にして、明日村を探してみようか」 「うん、」 「よし!とりあえず取れた魚を食うか!」 「食べよう」 そう微笑む。 少しだけ丸が元気になった。 それがなにより嬉しい。 たけ丸は自分が守らなければ…そう心に誓っていた一之介だった。 橋の下に藁を敷き、そこへ二人は身体を寄せて一夜を明かした。

ともだちにシェアしよう!