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第1話
戦国の世、各地で領土争いの戦が巻き起こる不安定なこの時代。
齢十二になったばかりの幼さ残る、たけ丸と一之介は、二人で必死に生き抜いていた。
少し前に暮らしていた村は焼かれ、両親とはぐれ気づいた時には、たけ丸と一之介、二人だけになっていた。
二人は幼馴染で、同い年。よく一緒に遊んでいた。
たけ丸は、村では一番の長者の家の息子で頭がとても良かった。歳の割には小柄で色白、髪は肩まで伸びていて、女の子のように見えなくもない可愛い少年だ。
一之介は村で一番の腕白者。活発な少年で手足が長く背丈も歳の割には高い方で、髪は短く刈り上げている。職人で狩人の父親のもと野山を駆け回り身体能力に長けていた。
いつも活発な一之介に、たけ丸はついて回ってとても頼っていた。
その日も二人は、村から少し外れた森で遊んでいたところ、突然、村が何者かの軍勢に襲われたのだ。
火の手が上がり、怒号飛び交う戦乱から二人は手を握り、ひたすら走って逃げてきた。
焼け野原になった里村から、逃げ出してどれくらい経ったか、山を登り川を下り、彷徨いながらも人がいる村を目指してひたすら歩いていた。
「大丈夫か?たけ丸」
声をかけるのは一之介。たけ丸より頭一つ背丈が高い。
「うん…」
「腹減ったか?」
「…うん」
「よし!なら少し休もう!」
途中で取っていた木の実をひとつたけ丸に渡す。
「ありがとう」
たけ丸は、小柄で体力もない、数日、木の実などで飢えをしのいできたが、それも限界にきているようで…
両親とはぐれたのも精神的に落ち込んでいて…
一之介はなんとか、たけ丸を元気付けようと声をかける。
「大丈夫だから、きっとたけ丸の母ちゃんも父ちゃんもどっかで生きてるから!おれたちも生き抜いて父ちゃん達をさがさなきゃな!」
「うん…」
「あ、川があるな、水汲んでくるから待ってな、」
「ぼくもいく」
「あぁ」
たけ丸の手を取り、一緒に川べりまでくる。
二人は早速水を飲み喉の渇きを潤す。
「水うめー!」
「おいしい」
冷たい水が心地よくて、自然と言葉が溢れる。
「よし!魚取ろうか!」
「どうやって?」
「銛を作るから、待ってろよ」
「この石がいいな、これと木の棒をつるで縛る、出来た!ほら。あとは、おれのも作るから」
出来たモリを、たけ丸に手渡しながら作業に取り掛かる。
「ありがとう、凄いね、一之介は」
「父ちゃんが色々教えてくれてたからな」
「でも凄い」
「へへ、じゃ、これで魚取って、焼いて食おうぜ!」
「うん」
そうして魚を追い、下流へと下って行っていると…
「あ、あれ…橋」
たけ丸が橋を見つけた。
「本当だ、人里が近いのかも…とりあえず今日は日が暮れてきたから橋の下を寝床にして、明日村を探してみようか」
「うん、」
「よし!とりあえず取れた魚を食うか!」
「食べよう」
そう微笑む。
少しだけ丸が元気になった。
それがなにより嬉しい。
たけ丸は自分が守らなければ…そう心に誓っていた一之介だった。
橋の下に藁を敷き、そこへ二人は身体を寄せて一夜を明かした。
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