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第11話
【 side 瀬戸 奏汰 】
キーンコーンカーンコーン・・・
サイアクだ・・・。
パンツの中がぐちゃぐちゃで、早くなんとかしたいのに気持ち悪くてゆっくりしか歩けない。
慌てて学食から飛び出したけど、これからどうしたらいいかなんて思いつかなくて。
こんなんで電車乗るとか無理だし、ましてや講義に出るなんてありえないよな・・。
ロングパーカーの前をギュッと握って前に引っ張ると、そのまま股間を隠しながらプール裏を目指してフラフラと歩いた。
そんな、目立ってはないと思うけど・・
誰かに見つかって、非ぬ噂を立てられるのはもう懲り懲りだった。
どんなに気を紛らわそうとしても、足を動かす度にグチャグチャともたつくパンツの中を嫌でも意識してしまう。
せめて、トイレでパンツを捨てればよかった・・けど、アイツがいたし。
深山にあんな事されてイクなんて・・・
やっぱり、あの時からオレは何も変わって無かったんだな。
深山にイカされた時、今まで必死に封印してきた記憶がフラッシュバックして、迂闊にも泣いてしまった。
やっぱ、気付かれたよな・・?
いや、あいつちょっとバカだから、誤魔化せるかな・・。
オレが人を寄せ付けない為にキツく当たっている事、本当は涙もろい弱いヤツだって事は、誰にも知られたくない・・。
今まで、弱みを知られて良いことなんて、一つも無かった。
嫌な思い出を振り払うように何度か頭を振って、オレは食堂前の広場を抜けて課外活動棟へと足を踏み入れた。
授業が始まると、運動施設しかない課外活動棟はシンと静まり返っていた。
良かった・・やっぱ講義中は誰も居ないよな。
ほっと胸を撫で下ろして、そのまま隅にあるプール裏まで辿り着くと、オレは壁にもたれてズルズルと座り込んだ。
このプール裏の高い壁と、外を走る車道から目隠しをするように植えられた2メーター程の植栽に挟まれた細い道に来るヤツなんて滅多にいないから、取り敢えずココで頭を冷やしてどうするか考えるか・・・
はー・・・それにしても、めちゃくちゃ疲れた・・・
俺を見下ろす深山の表情はまるで飢えた猛獣のようで・・
いつものヘラヘラした雰囲気じゃなくて、全部飲み込まれそうで怖いと思ってしまった。
同じ男なのに、そんな風に思った事が悔しい。
何で、俺がこんな目に合うんだよ。
深山のヤツ、本当に何考えてんだ・・・
あんな意味分かんねーやつに、必死に隠してきた秘密を知られるなんてーーー
ーーーー敏感体質ーーーー
自分が肉体的に・・・
特に耳が異常に敏感だって事に気が付いたのは、あの時だったーーー
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