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第10話
カナちゃんの髪を鋤ながら、手慣れた様子で口説き初めた狭山を無視して、殆ど食べきったたぬきうどんに視線を落とす。
ツンツンとワカメをつつきながら思い出すのは、相変わらずさっきの瀬戸のエロい喘ぎ声で。
そういえば、あの時は触れてもないのにイッた事が衝撃的で気が回らなかったけれど、瀬戸のヤツ泣いてたんだよな・・・。
あんな生意気なヤツでも泣くほど追い詰めたのだとしたら、多少良心が痛むんだけど・・・
まあ、あんな攻撃してくる元気がある位だし、気にする事ねーか!
未だズキズキする顎をすりすりと撫でて、バカみたいにデレた顔でカナちゃんを口説く狭山をぼんやりと見つめていると、後ろから瀬戸の名前が聞こえてきてーーー
「そういえば、さっき瀬戸君とすれ違ったんだけど・・」
「何々、声でもかけちゃった?」
「まさかー!今更そんな勇気ある子いないっしょ!
じゃなくてね、なんか顔色悪かったなーって思ってさ。」
「風邪・・・とか・・?」
「わかんない。けど、俯いて真っ青だったから気になっちゃって・・」
ガタン___
「ねぇ、瀬戸がどこに向かったか見た!?」
「えっ、キャ!深山君!?」
「お願い、教えて!」
「え、と・・・課外活動棟の方に行ったよ!
あっちの方に行くなんて、珍しいなって思って見てたの・・。」
「そっか、ありがとな!」
顔色が悪い、ソレは間違いなく俺のせいだろ。
サークルの時間でもないのに、課外活動棟に寄り付くヤツは居ねーから、授業が始まって人気が無くなるまでソコに隠れているつもりなんだろう。
(そうだ・・いくらムカツくヤツだからって、あのままにしておくのは流石に気が引けるし、原因を作った俺が行ってなんとかしてやらねーとな・・・)
とかなんとか、何だかんだ理由を付けて、その実再び瀬戸に会えるという事で浮足立っている自分がいて。
その時の俺は、瀬戸の名前を聞くだけでどうしてこんなにドキドキと鼓動が早くなるのか、なんて、そんな事には気がついていなかった。
去り際、教えてくれた女の子の頭をポンと撫でて、うどんのトレーを狭山に押し付けると、俺は購買へと全力疾走したのだった。
「ちょ、さっきから何なんだよお前は!!!!!深山!」
「パンツだよパンツ!じゃあ、俺急ぐから!」
「はぁ・・!?余計意味分かんねーよ!!!待てよ・・・・!」
「、、やば、深山君からの頭ポンとか超ドキドキした・・・」
後ろから叫ぶ狭山の声なんて聞こえなくて、瀬戸の所に行く口実を必死で考える。
いや、口実なんてもう良いか。
昨日のはまだしも、今日のは完全に俺に非がある。
瀬戸を見つけたら・・・
もし本当に瀬戸が落ち込んでいるんだとしたら・・
うん、そうだな。素直に謝ってやらん事もない!
俺は購買でボクサーパンツを買うと、課外活動棟へとダッシュした。
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