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第9話
未だジンジンと痛む顎をさすりながら、
売り切れを告げる赤いランプに埋め尽くされた食券機の前に立ち尽くす。
結局、瀬戸にかまっていたせいで定食は全滅だった。
はぁ〜ついてねぇな・・・そんで、顎!!すげー痛ぇんだけど!?
本当、瀬戸のヤツ綺麗な顔して中身乱暴だよな。
もうちょい可愛げがあったら俺だって・・・
ん? 俺だって・・?
一体可愛かったらどうするっていうんだよ!!
昨日から俺どうかしてんな・・男相手に何考えてんだろ。
中学生みたいに、場所も考えずにサカってあんな事するなんて・・・!
瀬戸は綺麗だからって別に女っぽいわけじゃねーし、どうしてあんなに興奮すんのか自分でも分かんねーんだよな。
一つため息をついてから、唯一残っていた【たぬきうどん】のボタンをそっと押した。
ピッ・・・カタン・・・・
は〜虚しい。これしか残ってねーなんて・・
うどんを持って狭山の元に向かうと、いつも通り女の子を侍らせてニコニコと愛想を振りまいている姿が見える。
近づけば、狭山の食器はすっかりカラになっていた。
「お〜深山、お前何してたんだよ。」
「ちょっと、野暮用・・」
「ふ〜ん、意味深。ん? お前顎どうした?ちょっと赤くなってるぞ?」
「マジで!?」
「はは〜ん。痴話喧嘩か?相手絞んねーのもいい加減にしねーとそのうち刺されるかもな〜」
「それ、そっくりそのままお前に返すワ・・」
「フッ。俺深山みたいに馬鹿じゃねーから。で、お前にそんな事する気の強い女は一体誰なんだよ?」
「バカって何だよ!!・・・・お前には関係ねーだろ・・」
俺が下手打ったのが楽しくてたまらないって顔でクスクス笑う狭山。
瀬戸にエロい事してて遅くなったなんて、口が避けても言えねー・・・
こいつの事だ、爆笑して言いふらすに違いない。
もし逆の立場なら、なんのギャグだよって俺も爆笑するに決まってるからな。
悲しい事に狭山と俺の思考回路が似ている事は、入学して半年程の付き合いだけど良く分かっているつもりだ。
他人事だと【男に欲情した】なんて、あり得ねーって思うんだけど、実際あんな状態の瀬戸を目の前にしたら自分でも止めらんねー位興奮するんだよな・・・。
「二人ともサイテイ〜!でも、私、深山君なら何されてもいいかも♡なんて、ふふ。」
「え〜!カナちゃん、こんなヤツのどこがいいの?俺、一途だよ?俺にしときなよ!」
「だって深山君めっちゃカッコイイんだもん!それに、狭山君はそれ誰にでも言ってそうだからヤダ!キャハハ」
目の前に座るカナちゃんとやらは可愛いとは思うけど、「いつでもいい」なんて言われても俺の股間はピクリともしなくて。
俺どうかしちゃったんかな・・
にしても、瀬戸可愛かったな・・・
真っ赤になって震えながら、感じてるのを必死に耐えている瀬戸を思い出すとムラムラしてしまう。
また触りてーな。
なんて、さっき必死に振り払ったハズの邪な考えは、いとも簡単に俺の頭に舞い戻ってきてしまった。
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