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第31話
それを解消するためにも、はっきりとさせておかなくては。
弁当を食べる前にこの話は終わらせてしまおうと覚悟を決めて渋澤の居る横へ顔を向けた。
すると渋澤はすでにお握りを頬張っている。
「……食べながらでもいいから聞けよ」
「はぁ。何すか」
「先日の件について、僕に何か言うことは?」
「え……」
笹本がだて眼鏡のレンズ越しにじいっと渋澤を見据えると、渋澤は若干頬を赤くして、首を傾げながら「ご、ごめんなさい?かな?」と言った。
なぜ頬を赤くする。
悪いことをしたとは思っていないのだろうか。
「合ってます?」
そう言って悪人面の渋澤がにこりと笑った。
「……」
驚くことに罪悪感というものは渋澤には存在しないらしい。
あったとしてもコンビニ弁当ほどしか感じていないということだ。
笹本が口を開けたまま呆気にとられた顔で渋澤を見ていると、渋澤はお握り最後の一口をぱくりと口に入れた。
「でも俺、例えこれが叶わない恋だったとしても、笹本さんにしたことを後悔してはいないです。好きな人には振り向いて欲しいしもちろん心も体も欲しい。だから酔っぱらっていたとは言えど、笹本さんと一晩一緒に過ごせたのは俺にとっちゃ奇跡みたいなもんで。裸で触れ合えてめちゃくちゃ嬉しかったし、それにあの時もすっげぇ可愛かった。……少しは俺の告白の返事、考えてもらえました?」
ふざけるなよと思っていたのに。
いつの間にか渋澤に口説かれていることに気付き、今度は笹本の頬が赤く染まった。
しかしこれは、断じて気があるからとかではない。
恋愛経験の少なさが、頬を体を熱くするのだ。
─そう、違う。僕は口説かれ慣れてないから。だから……。
笹本の手が勝手に自分の頬を押さえた。
熱い。体の異変を感じた笹本は心の中でそう、しどろもどろになりながら言い訳をした。
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