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第142話
渋澤はそれに応えることなくふいっと視線を逸らす。
「っ……」
─絶対ただの意地悪だ……!
恐らく渋澤は笹本の意図していることに気付いている。それなのに渋澤は態と知らない振りをしているのだ。
それがありありと見て取れるから、こっちも変な意地を貫き通すしかないと意固地になる。
自分の好きな人の性処理する姿を他の人に見せて平気なのか。
渋澤は自分のことが好きではないのか。
言葉にならない思いが笹本の頭の中で暴れだす。
「いいよ……。3人でしよ」
笹本がやけくそになって吐き出した捨て台詞だった。
その言葉に眉をピクリと動かし人殺しでもしそうな人相になった渋澤と、片や弾かれたように顔を上げ嬉しそうに口元を手で覆った小泉と、2人は非情に両極端な反応を示した。
「いいっすよー。どこでしますか?俺んち近いし俺んちでもいいけど。ちゃちゃっとやって早くお開きにしましょーよ」
「ちゃっちゃとって、大事なことをそんな風に言っていいんですか!?」
「大事なことなら3人でやったりしないだろ。アホか」
静かな渋澤の声に怒りの色が含まれているのがわかる。
─もしかして僕が悪いのか?いや、違う。渋澤が勝手に怒っているだけだ。
笹本の混乱がピークを迎えた。
「僕は別にっ、渋澤の家でもどこでもいいけど!」
「だめです!どこでもいいなんて言ったら障害者用のトイレに連れ込まれますよ!」
「あぁ?んなことしねーよ!流石にそのトイレはねーわ。んじゃ俺んちでいいんですね」
「い、いいよっ。僕は渋澤の家に泊まったことだってあるんだし、今更何も思わない」
「ええっ!そうなんですかっ!」
渋い表情の渋澤の隣で小泉が両手を広げ、漫画みたいに驚きのポーズを見せている。
満場一致で処理会場は渋澤の家に決定した。
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