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第141話
「それは……その……」
束の間の沈黙。笹本は泳がせていた視線を渋澤に合わせる。
「僕たち友達だろ?友達だったらその……、するのも当たり前だって言ったのは渋澤だ」
そう口にした途端急激に恥ずかしさが込み上げて、顔がかぁっと熱くなり、笹本は着けていたマスクを大きくずらして口元を晒す。
ここまで言えば渋澤も小泉も、何のことだか検討はつくだろう。
けれど2人とも口をぽかんと開けたまま、笹本をただただ見詰め、時が止まってしまったかのように動かない。
「つまり、その……。僕は、抜き合いがしたいんだけど」
「……っ、」
渋澤と小泉がごくりと息を飲んだ。
ちら、ちら、と笹本が上目遣いで、渋澤を見詰める。
黙っていた渋澤が先に動いた。
渋澤は何も答えず無言で笹本の手首をぐっと掴む。
「渋澤?」
「3Pのお誘いってことでいいんですか?それとも俺とそういうことをしたいの?どっち?」
「さ、さんぴー?」
「俺と小泉と笹本さんと3人でってことなのか、それとも俺とってことなのか」
どうしたらいいのだろう。
悩んでいる間にも、告白される前に小泉も友達になりたいと言っていたことを思い出す。
これは友達付き合いの延長という体で自ら切り出したこと。
「僕と渋澤はそういう友達だけど、小泉も一緒がいいっていうのなら断る理由も……ないし」
我ながらおかしな返事をしていると思う。
本当は違うことを言いたい筈なのに、笹本の中の何かが邪魔をする。
「だとよ。小泉も行くか」
「いっ、行きます!渋澤さんと2人でなんて、あ、危ないですよ……!友達以上の事に及ばないように、俺ちゃんと見張ってますから」
「んなこと言って。お前笹本さんとエロいことしたいだけだろ」
「違います!」
違うのは笹本の方だ。本当は違うのだ。笹本の気持ちがそうじゃないと迫り出す。
笹本は縋るような眼差しで渋澤を見詰めた。
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