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第206話
しかし一向に渋澤が戻らない。
腹の調子でも悪いのかと流石に心配になり、笹本はトイレのドア越しに声をかけた。
「大丈夫か?」
「大体大丈夫です」
「んん?大体、大丈夫……?変な奴だな」
おかしな返答だなと思いながら笹本は散らかったテーブルを片付けに戻る。
その流れで使用した食器を洗っている最中、背後から渋澤の深刻そうな声が聞こえ振り向いた。
「笹本さん」
渋澤はベッドの上で仰向けに倒れ、胸の上で何かに祈るように手を組んでいた。
「へ……?」
「ご褒美です」
「は……?」
「俺が笹本さんの童貞をもらってあげようと思って」
「んんん?」
「だから、ご褒美です。俺の、処女」
「!!!」
笹本の手から洗いかけの食器が滑り落ち、ガチャンと嫌な音を立てた。
その後の二人がどうなったか、それは二人しか知らない、二人だけの秘密だ。
end
2019.01.02
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