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一夜の過ち!?
今日も今日とて脇役日和。
ここにいるのに気付かれない。そんなの今に始まったことじゃない。
寂しいなんて思わない。
こんなのには慣れっこだ。
「これは発注が必要……」
ぼそぼそと独り言を口にしながら笹本敦也は薄暗い備品倉庫で、伝票や帳簿などの事務用品に囲まれて在庫確認に追われていた。
これらの不足分を手元の発注表に記入し発注先へFAXすれば終わりなのだがどうにもこうにも数が多すぎて終わりそうにない。
壁の全面が棚になっていて、つまり部屋の隅から隅までが事務用品置き場。
これを全て一人でチェックするというのは無理な話ではなかろうか。
笹本は手に持っている赤ペンで頭をカリカリと引っ掻いた。
直後、きゅるるる、と腹の虫が泣く。
「……」
就活中の学生みたいな濃紺スーツの下に隠れた貧弱な腹を上から眺めて、今何時だろう?とふと思った。
左手首の腕時計を確認すると、午後1時28分。
「……え、マジで」
とっくに昼の休憩時間は過ぎている。
いつもならば総務部の自分の机で昼を知らせるチャイムを聞いて昼食をとるのだが、備品倉庫にチャイムの音は届かないらしい。
しかも午後の就業時間が始まっているのに、誰一人、この備品倉庫に笹本を呼びにくる者もいない。
自分はいてもいなくても変わらない空気みたいな存在なのだろうか、と少し寂しくも思う。
笹本は小さな溜息を吐き、流石に一度戻った方がいいかと赤ペンのキャップを閉めた。
「誰かいんの?」
その時後ろから声がした。
何か足りなくなった事務用品でも取りに来たのだろうか。
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